世界は終わりそして初まる。永遠などなく神は自分以外の永遠を許さない。故に世界は美しい。
気がつくと俺は、蒼穹を見上げていた。
空は哀しいほど青かった。
どこまでも青く、そしてどことなく物悲しい。
優しい風が吹き抜けざまに頬を撫でる。
まるで心が浄化される、そんな感じがする___
「って、何で俺は空なんか見てるんだよ」
颯爽と立ち上がり、あたりを見回す。
どこにでもある普通の木、もとい林だった。
「どこだよここ・・・?」
見覚えなどまったくない。
「は、はぁ?何が、ぇ?どうなってんの?」
それに加え、これまでの記憶がない。
綺麗さっぱりない。
否、この表現は正しくない。
実際は、霧が出てもやがかかりみるにも見えないと言った感じだ。
買い物に行って何を買おうと思ったのは忘れたが、何かを買おうと思ったのは覚えてる、そんな感じだ。
とにかく、この状態が気持ち悪くてしかたがなかった。
更に、自分の名前まで覚えてないという始末。
知識があり言葉を喋ることができるのが不幸中の幸いだろう。
「物語系だとここで心優しいお爺じいさんあるいはお嬢さんがどこからともなく現れて同情して家にとめてもらえるんだろうけどなー・・・・・」
説明口調っぽくフラグを立てて見たが、さして効果がなかった。
それもそうだ。
世界はそう簡単に救われるほどおめでたくできてはいない。
神は存在しない。
「記憶喪失ってあれだよな、頭の強打による記憶障害。」
そういいながらあたりを見回す。
もちろん、木しかない。
「何でこんなところにいたんだ?そしてどこでぶつけたんだよ・・・」
交通事故とかならまだわかるけど、こんなところでどういう状況なら記憶喪失を引き起こせるだろうか。
「・・・・・・っ、ぁ・・・痛え・・・」
突然の頭痛に襲われる。
こういうのアレだろ、記憶が戻る時の前兆だろ?
「何でこんな時に・・・っ、痛・・・・」
考えようとすると頭痛が起こる。
「ひょっとすると、まだ頭を強打した時(必ずしも打ったとは言えないが)の痛みが引いてないのか?」
とりあえず、考えることを放棄した。
これ以上頭痛に悩まされるのは御免だからな。
「はぁ、さっさとこんな林からは退場しようか。日が暮れたらたまったもんじゃない。」
あてがあるわけじゃないが、ただじっとしてるのは性に合わなかっただけだ。