第4章の4
「え?」
「私に頼んでもらえれば、マタタキちゃんこれからもずーっと一緒にいられるんですけどねーーーーーと言ったんですよ!」
「でも、未来は変えられないって・・・」
「そう、人の手では変えられません。むろん私の手でもですよ。私は生きている人を治すこと専門ですからね。ただ、人の運命を司ることが専門の者もいるんですよ」
「専門て、命の扱いが軽すぎやしないか・・・」
「それは違いますよ、ミズサキ。あなた方は自分たちが一番尊いと思っているからこそ、人の命についてだけ異常に敏感になるんです。逆に人以外の生物に対してはそこまで思い入れをしていないでしょう。あなたは毎日命を奪って食べているものに対して、真に心をこめていただきますと言っていますか?」
「むむ、それを言われると・・・」
「われわれ人以外のものからすると、人の命も他のありとあらゆる生物の命も同じなんです。あなた方人間は死んだ植物を復活させるという場合、命の尊厳がとか本気で議論しないでしょう。われわれも人の運命を変えることについていちいち議論はしませんよ」
「それじゃあ、何でティタさんはマタタキを助けようとしてくれるの?」
「それは・・・身近な人が死ぬのはもう、見たくないからです・・・」
・・・・・・・・・・
しばらくの沈黙の後、ティタさんは気を取り直していつもの元気で語り始めた。
「さて、運命についてお話しましょう。この世界には運命を司る女神が存在します。モイライ3姉妹と言いまして、3人がそれぞれの役割を担っているのです。
命を紡ぐ者『クロト』、命を割り当てる者『ラケシス』、命を断ち切るもの『アトロポス』」
「その3人によって人の一生が決められるの?」
「簡単に言うとそうですね。実はクロぽんのところで色々あるんですが、それは今回は省略しましょう。とにかくこの3人にお願いをして命の糸の長さを変えてもらうんです。」
「3人て・・・クロトさんに頼んで紡ぐ糸の長さを変えてもらうだけじゃだめなの?」
「いや、せっかく苦労して長さを測ったラケちゃんや、今か今かとちょん切るのを楽しみにしているアトロんがのけ者にされたって怒るでしょう。そうしたらそれぞれの作業をボイコットされて、マタタキちゃんの存在そのものがなかったことにされてしまうんですよ。」
「それは困るな。」
「そう。だから絶対3人全員にお願いしないといけないんです。ご機嫌取りはどの世界でも同じなんですよ! そうだ、何か手土産に珍しいものを持っていかないと。」
「そういうものなんだ・・・」
「そういうものですよ!」
俺は学生にして、社会に出るということの厳しさを知った。
「何たって、お土産を手渡すのはミズサキなんですからね!」
「ええ、俺が!!俺も一緒に行くってこと!?」
「当然ですよ!あの3人、若い男の子が大好きですから。」
「・・・・・」