第4章の3
「待て!今何て言ったんだ」
俺はハバタキの顔をまっすぐに捉え、聞き返した。
「マタタキが死ぬなんて、うそだよな!」
ハバタキは力なく顔を横に背け、こう答えた。
「3日後の放課後、午後3時40分、ハバタキは校門に突っ込んできた車にはねられて・・・死ぬ」
「見たのか?お前はそれを見たのか!」
俺は興奮して、ハバタキの襟首を掴んで詰め寄っていた。
「見た・・・完全に即死だった」
「!」
「おい、3日後だろ。じゃあ本人に知らせたりとか、車が来ないように校門を閉めさせておくとかできるだろう」
ハバタキは力なくこう言った。
「さっきも言ったが、定まった未来は変えられない。どんなに変えようと努力をしても何らかの妨害が入ってしまうんだ」
「まさか・・・ありえないだろ。俺今からマタタキの携帯に電話して知らせるからな」
俺はおもむろに携帯を取り出し、マタタキに電話をかけた。
『トゥルルル トゥルルル トゥルルル』
つながらない。まあ、こんなことは良くあることだ。今日の晩にでももう1回かけてみればいい。よし、メールをしておこう。メールなら3日あれば一度くらいは見るだろう。
俺はメールを送った。当然、本人が死ぬとかそういう内容ではなく、3日後の放課後は教室で宇宙人についての話をしてほしいという依頼だ。
これでよしっと。
「無駄だ・・・すべてに妨害が入る」
「やってみないとわからないだろう。お前はマタタキを助ける気はないのかよ!」
するとハバタキは悔しさをにじませながら
「やったさ!僕もメールを送ったり、直接本人に話しかけようともした。だが携帯が行方不明だとか、本人が急に体調を崩して家に帰ったとか不可解なことばかり起きた。さっきなど家に電話をしてマタタキの母親に知らせようとしたら、僕の声が急に出なくなった。」
「まさか・・・」
にわかには信じられなかったが、俺はこいつがこんな場面でうそを言う奴でないことは知っている。
「今校門を閉める約束をしても、当日は何らかの要因で開いてしまうだろうし、たとえ僕たちが午後3時40分直前にマタタキを引きとめようとしようとしても、何かしら妨害を受け、本人のそばにすら辿り着けないだろう・・・」
「そんな・・・。じゃあ、マタタキは・・・マタタキは・・・」
俺はどうしようもない喪失感に襲われた。
人の運命とは残酷なものだ。人の手によって簡単にもてあそばれるくせに、肝心な時には人の手で変えられないのだ。
「あのー。」
後ろで声がした。
「何だよ、ティタさん、今はふざけられるような気分じゃないんだよ」
それを聞くとティタさんはぷぅっとふくれて、こう言い放った。
「あーあ。私ならその運命を変えられるんですけどねーっ!」
「!!」