【6】 探偵様は、たまにはイイコトを言う。
なんやかんやで、浮受さんがぶっ壊れました。ごめんなさーい。
でもでも、そこんトコうまくカヴァーしつつの……(汗)
……ハイ。本格的(?)調査に乗り出した一行。いったいどうなってしまうのか!?
ハプニング続出の、第6コマ目スタート!!!
まさかの信号待ち?ぞろぞろと進む人の波が、のろりと止まった。比較的身長が低めの私の前に立ちはだかるのが、クールビズを優雅にキメこむサラリーマンの大きな背中。卵色のストライプが入っている、わずかにブルーの生地には、肌の色が透けるほどの汗が染みついていた。クールビズなのになぜか暑苦しく感じるのはなぜだろう。目に入れないように努力しても、ムンムンと蒸し暑い熱気が熱風とともに押し寄せてくるので無駄におわる。
……結論。もう少しの辛抱だ。ガンバレ私。
しばらくして、信号が切り替わったのか、無数の足が動き出した。
「ひゃあっ」
都会の人の波に呑まれそうになった私の手を、誰かの手が強く引いた。
「迷子になっちゃ、いかんぜよ!!」
きっちりと着込んだスーツとワックスで整った真摯な髪型。
「ふ……浮受、さん、ですよね……?」
「早く行かねば、奴に遅れをとってしまう!」
私は人ごみの中で、思わず笑みがこぼれた。少々壊れた浮受さんの冷えた手が、私の右手と馬央位様の左手をぎゅっと握る。
――――――――――
人ごみから解放されて、やっとお互いの会話が聞こえる歩道まで来た。改めて浮受さんにお礼を言おうとしたが、彼は隣に居らず、ずっと後ろを歩いていた。代わりに所長が隣にいた。
「浮受ってさ、イイ奴だよね」
「はい。私もそう、思います」
「本心だと思って演じていたのが、実はウラの性格で。裏だと思って大切に保管しておいたはずの本心が、時折でてしまう。これが、浮受の最大の秘密なんだよ」
「そうですね……浮受さんって、意外と苦労が多いんですね」
自分のホントの気持ちが出せないまま、時は流れていく。
「彼の心のより所は、馬央位様一人だけなのかもしれないですね」
「そうでありたいと常々思ってはいるんだけどね。でも、驚いたな。こんな風に浮受が変わるのって、滅多にないことなんだよ?」
「そうなんですか?」
馬央位様は、いたずらっぽく耳元で囁いた。
「浮受に……認めてもらえたってことだよ。確実に信頼されてる」
一度振り返って浮受さんを確認しては見たものの、ぶっきらぼうに逆戻りしたその顔じゃいまいちそういった実感が持てない。
「信頼……そうですね。それが本当であってほしいけれど、私にはまだ大きすぎる目標ですかね」
今の言葉を聞いて、馬央位様は浮受さんのことを真っ直ぐ見ているんだなって心から思った。
『あの冷えた手が意味するもの、なんだかわかる?』
その問いかけの答えは、もうわかっている。“浮受さんは、心があたたかい”ですよね。
脳内メモにそう付け加えて、歩く速度をワンテンポ落とし、浮受さんの手をとると、なぜだか少し馬央位様の気持ちが理解できるような気がしてきた。いつもに増して軽快な所長の鼻歌およびスキップを多めにみてくれている浮受さんがいつもよりも輝いて見えたのも、きっと馬央位様のおかげ。
「浮受。この辺に、難駄さんの豪邸があるはずなんだけど……見える~?」
「いや、見えんな。俺はさほど目が悪くないのだが……道はあってるのか?」
「はい。バッチリあってますけど」
「じゃあ、この地図が古いってことか!?」
「いや、待って。あのコ……」
語尾を濁した馬央位様が、スキップを突如やめて、標準の歩きで何かに向かっていく。
「馬央位様~?」
「……待て。誰かと話しているぞ」
浮受さんに促されて電柱に隠れて様子を見ることに。話しかけているのは、パッチワークのロングスカートと白い丸襟ブラウスの清楚な感じの女の子。年は私と同じか、やや年上ってところ。茶髪のみつあみはオシャレだよね~……。同じ年頃の子を見ると、どうしても自分と比べてしまう。
話し声が耳にとまって、すぐ服装チェックはやめたけど。
「ねェキミ。羽昇梅さんトコで働いてるコだよね?」
「そーだけどッ! アンタ何ー者ー?」
「ボク、ユキオミ君の友達なんだ。砺龍探偵事務所の所長をやってる、砺龍馬央位っていいます」
「レールウ……? アンタもしかして、ご主人さまの依頼人のヒト?」
「そうだよ。じゃあ早速だけど……キミのご主人のトコまで案内してくれないかな?」
「探偵さんのお願いなら仕方ないかっ! じゃ、ついてきてェ」
赤い靴をカコカコいわせて歩いてゆく少女を目で追いつつ、ウチの所長は私たちを手招きする。しかし、前を行く少女は絶対気づいているだろう。なんてったって、手招きダケならいいものを、わざわざ音声でもお知らせしてくれるんだから……。
「浮受ーナギー! こっちこっちィ~!!!」
両腕をあざやかに振り回して……ぶんぶんぶんっと。
もう、まいっちんぐ\(-o-)/
つづきます☆
浮受さんのファンを1人でも多く獲得するために…汚い手を使ってしまった…!
でも浮受さんってやっぱりイイ奴だったでしょ?ね?ね?
……そこで黙るのやめてくれないかな?心配になるから。