表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄金比  作者: 空と雲
5/22

【5】 探偵様、お仕事ですか?

 私たちのオフィスを突然訪ねてきた、浮受さん。でも、それにはワケがあって……。

 怒涛の第5コマ目!!

「実は、今回ここに来たのは、ちょっと依頼したいことがあってなのだが」

 塩カステイラを食べ終えた浮受ふうけさんは、フォークを持ったままの状態で口をひらいた。キリッと整いまくった目が、どうしても持っている小物に合わなくて、私は含んだレモンティーを吹き出しそうになるのをこらえることで精一杯だった。

「うん。何?」

「その……なんだ。こないだ俺が所用で不在中に、助手が伝言をあずかっていてな」

「うん。それで?」

「お前“ハショウバイ ナダ様”って知らないか?」

「はしょうばいなだ? 聞いたことあるような」

「何っ! 知っているのか」

「ないような?」

 あらまあ、所長ったら楽しんでる。

馬央位まおい……てめェ、マジで息の根止めるぞ」

「ごめんごめんご」

「……まあいい。話を聞く気がないなら他をあたるからな。言っておくが、お前よりは知名度がわずかに低いからといっても、全く知り合いがいないわけではない。お前に協力を要請ようせいするのは滅多に無いことだ。手柄が減るのは御免だしな。いつもみたいにおフザケが通ると思ったら、大間違いだからな! いいか」

「だーいじょうぶさ! その人、たぶんボクの知り合い」

「ハショウバイなんとか様の?」

 私は思わす口を挟んでしまった。浮受さんの視線が怖いよー。おびえるリアクションをする私に、馬央位様はあの笑顔を向けた。


「うん、そうだと思ったけど。漢字にすると……」

 ペンをメモスタンドに滑らせていく。ここでまた一つ発見が。


 はやの発見手帳③

“馬央位探偵は、字が恐ろしく美しい”


「ハイ、できた☆」

 そう言ってビリッとメモをはがすと、テーブルの上に指で押さえ置いた。え――――と、純・楷書体を読み上げます。


【羽昇梅難駄】

 これで、『ハショウバイ ナダ』と読むのだそうです。


羽昇梅はしょうばい……名字ですよね。一体どんな知り合いなんですか?」

「えっとねぇ、ものすんごい大富豪」

 大富豪……。なんだか名前からあらかた予測はつく。でもどうして、そんな滅相もないお方と知り合いなんだろ。

「ボクの最近のお友達のお家の、主人ってトコかな。あ、よかったら遊びにいかない? 浮受もさ、って……なんでそんなにボクのこと、にらむの? 恐怖心をいだいちゃうんだけど」

「……お前、話聞いてた? 今からその家に調査に行くならまだしも、『遊びに行く』って何だそれ。その家のご主人……羽昇梅様が折り入ってファクシミリをくださったんだ。きっと深刻な事態に悩まされているに違いない!!」

「違いないって……あなた、用件知ってるんでしょ? 知らないの?」

「凪原、お前はそんなにせっかちじゃ無かったハズだ。それがどうしてこんな様に……ああ、すまない神よ!! 凪原を責めないでくれェ!」


 ……ぶちぶちっ。


「お前は私の何を知ってるんだ。あァン?」

「すいません凪原さん。あの、なんてゆーか俺、いきすぎました」

「で、実のところどうなの? 浮受」

 いき過ぎた私を押さえつけるようなノリで、馬央位様が程良く口をはさんだ。

「ファクシミリには住所と名前、それから『早く来い』しか書かれていなかった」

「じゃあ、今から“調査”に行かない?」

「今から……ですか」

 私は荒くなった息を少しととのえ、時計の針を見た。もうすぐ、魔のお昼時。都会での移動はかなりの困難を伴う……。できれば行きたくないんですが。ね、浮受さんも嫌ですよね?まともな答えを信じて、私は彼のカオを見た。なんだかイヤな予感がしたと思ったら、的中した。超真顔で「イエッ・サァア!」ですってよ。

 なんじゃこりゃ。浮受さん、キャラおかしくなってません? 女性ファン、確実に減りますよ。いいんですか。


「さあ、そうときまればさっさと動こう! 食後の体操にはちょうどいい!」


 はやの発見手帳➊

“浮受さんは、自分の中に異常なポジティブキャラを飼っている”


 クールな人に限ってこうですもんね。お約束です。さっきの「さあ」から始まるセリフはもう一人の浮受さんの発言。馬央位探偵と肩を組んで歩くサマは、ちょっと非公開映像にしたいくらいレアモノ。あの浮受さんがどうしたらこんな……。

 もう、どうにでもなれってカンジです。マジで泣きたい。


浮「やっほー!俺・浮受だよww」

馬「ごめん、浮受スイッチ入っちゃったみたい」

は「どうしてくれんですか!ツッコミがまわりませんよっ!」

浮「じゃー続くぜィっ☆」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ