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黄金比  作者: 空と雲
22/22

特別企画【砺龍氏誕生日編】

本日3月9日サンキューの日は、我が癒し系所長、砺龍馬央位探偵の誕生日です!

【砺龍氏 誕生日編】


思い出すと、それは長くなる。


幸せそうな笑顔が大好き。

ずっと、ずっと、あなたを支えていたい……。

っていうのはウソに決まってるでしょ。

え?聞こえなかったからもう一度?

もう!そういうのはやめてくださいっ!



「ねえ、今日は何の日か知ってる〜?勿論知ってるよねー?分かってるから言わないんでしょ〜ねえねえってば〜〜」


とても暖かい陽の光。

今日はいつも以上に晴れやかな空で、最高の洗濯物日和だった。


カレンダーの日付は3月9日。赤いサインペンでハートのマークが描かれているが……?


(なんの日だっけ)

私は何にも思い出すことができないでいた。


ガラガラッ

ピシャッ


「おはよ!」

「あ、馬央位さまおはようございます」

「爽やかな朝だよね!」

「そうですね……」

思い出せそうで、思い出せない。

「最ッ高な朝だよね!!」

「ええ、気持ちがいいですね」


私は所長の言葉を右から左へと受け流し、頭の片隅にあるはずのハート印の内容を必死で探していた。

(本当になんなんだろう)


私が唸りながら考えていると、所長が怪訝そうな顔で尋ねてきた。

「?どうしたの?何か悩み事でも?」

「いえ……なんでもないんです」

あなたに聞いても多分無駄だと思うし……。

私は首を横に振ったが、逆効果だったようだ。彼は尚も食い下がってくる。

「聞くだけ聞いてもいいじゃんか〜〜!それってボクに言えないことなの?」

「えっと、そんなんじゃなくて」

言いかけて、ハッとした。


真っ赤なハートのサイン……。


もしも。

もしも、このカレンダーのハート印が、所謂「恋愛系のスケジュール」だったとしたら、その時私はどんな顔でどうやって答えればいいの?


それが馬央位さまと関わってる何かだったら、私は……どうすればいいの?


「おーーい?ナギ?ナーギってば!」

「ひっ!」

「所長めーれー!」

「?」

「今すぐ何で悩んでるのか言いなさい!今すぐ!now!」

「いっ、言えません」

いろんな意味で。

「それは所長命令でも?」

「でも……」

「大丈夫!口はチャックしてる」

「……」

これほど信憑性に欠ける言葉はあっただろうか。

でも、このまま黙りを続けていても何も動きそうにない。

私は意を決して全てを話すことにした。



「はあぁぁぁぁ?!!」


……これが、全貌を明かしてからの第一声。

所長の大きく見開いた瞳に、逆さまになって似た顔をしている私が映った。


「ナギ……それ本気で言ってんの」

紅茶のカップをカタンと置いて、腕を組む所長。目が合って、心臓がドキンと跳ねた。

「本気……とは?」

「いや、だからさ。ほんとに思い出せないの?」

「はい」

思い出せないから聞いているのであって。

私が苦い顔で俯くと、馬央位さまはおもむろに立ち上がり、ドアの方へと歩き始めた。

そして、ドアに手を掛けると、

「ああ〜〜ホントにダメだなあ。浮受とかに聞いてごらんよッ!」

と、それだけ言い残して部屋を出て行ってしまった。


「……?」


結局、手がかりは掴めなかった。




カララン☆


玄関のチャイムが鳴った。

「あ、ヒトミちゃん!と、浮受さん!」

「おはよう♪」

「はよ。馬央位は?」

浮受さんの手には、高級そうな袋。

「所長なら、なんか拗ねて、さっき部屋を出て行きましたけど……何かご用事でしょうか」

「用事もなにも、今日は誕生日じゃねぇか」



え?

誕ッ?



「誰のですか?」

「お嬢の上司さんに決まってんだろ」

「砺龍さん、甘いもの好きだと伺っていたものですから、麻墓様ったら気合入れてチョコレートケーキを丸ごとワンホールご購入されたのよ?」

「……おい、人見」

「ふふ、いいではありませんか♪ご友人のお誕生日にケーキの贈り物なんてとても素敵だと思いますよ」


……そうだったのか。全て話が通ったぞ。

赤のハート印は、所長が好きな赤色とハートマーク。

さっき拗ねたのは、自分の部下には当然誕生日くらい覚えてもらっていると信じていたから。


「……なんか悪いことしたみたいです。私が悪かったです」

「大丈夫だろ。あんなん一時的なものだろうしな」

「砺龍さんも甘いものを差し上げればきっと元気になってくれるはずだよ」

「うん……」


その後、私は所長室へと重い足取りで向かった。

怖々と木のドアをノックする。


コン、コンコン。

「なっ、凪原ですがっ」

部屋から声はない。

「おっ、お、お誕生日、おめでとうございました!!」

よし。これで大丈夫なはず!

……だよね?


「あーーーーそんなんじゃ全然ダーメ。押しが弱いぜ、お嬢」

後ろから声がしたかと思えば、そこにいたのは浮受さんだった。

「浮受さ……」

「いいから黙って見てな。……馬央位。いいか、よく聞け。ここにテメェの愛するチョコケーキがある。お前が今すぐここから出て来なければ、これは俺のファンの子にくれてやる!嫌ならさっさと出て来やがることだな!!」


おおっ。

その説得力のある言葉には勿論感動を覚えたけれども、浮受さんのそのドヤ顔にも妙に感動してしまった。



予想はズバリ的中。

ドアの向こうで鋭く目が光る風景が想像できた。

勢いよくドアが開け放たれ……


「主役はボクだ!!!!!!」


少し赤く腫れた目で、本日最大の主役が登場した。


「あーはいはい。仕方ねぇなあ。おい、祝ってやろうぜ」

「はい♪」

「お嬢は?」

「……勿論、お祝いさせていただきますとも」



それから私たちは4人でテーブルを囲んでケーキを切り分けた。


パーティーも終盤に近づいてきた頃。


「ナギ」

「はい?なんでしょう」

「ゴメンね、さっきは」

「えっ、と何のことでしょう」

「ボクあれから部屋で考えてみたんだけどさ、ナギに誕生日教えてなかった気がしたんだよねー」

「ああ、そのことですか」

私もそんな気がしてましたけど。

「でも、今こうして祝ってもらえてすごく嬉しいよ。ありがと」

「いえいえ。こちらこそ楽しい時間を共有できて光栄です」

「これからもずっとよろしくね」

「はい」

「ずっと、だよ」

「っ……はい、勿論そのつもりです」




楽しい時間はあっという間。

来年は私がカレンダーに赤いハートマークを描く番だよ。



ハッピーバースデー。馬央位さま。



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