スキってこと
「そーいやなーんでモモはくっらーい顔してたわけ?」
戒が寝転んでるおれをちらっと上からみた。
おれは起き上がると戒をみないで前をみながらポツリポツリと話をした。
「ん〜…。大したことじゃないんだけどね。おれさ〜…」
そこまでいって一回言葉を続けるのをやめた。
戒にまず口止めしなきゃ。
「どうしたの?」
戒が不思議そうな顔でおれをみた。
「うん。あのね、戒。おれがこれから話すこと絶対誰にもいわない?」
戒の目をみてはなす。
戒はコクリと頷いて「わかった」と一言だけ言った。
「じゃあ話すね。おれ好きな子いんの」
そういったら戒は驚いた顔をした。
「モモ…好きな子いるの…?それって彼女?」
彼女といわれてなぜか不意に頬が赤くなってきた。
「かっ彼女じゃないけど…」
どもっちゃった…。
鈴ちゃんが彼女とか想像するだけで嬉しすぎ…。
「ふ〜ん。それ誰?」
なんか急に戒の口調が冷たくなった気がした。
どもっちゃったし引かれた??
戒はモテるから…。
おれの気持ちなんか理解してくれないかも。
でもここまで話してやめるのもなんか微妙だから全部
話すことにした。
「うん。鈴ちゃんって…えっと、森川鈴ってわかる?B組の…」
戒をみると戒は少し考えてるようだった。
おれはA組。戒はF組。
鈴ちゃんとは結構クラス離れてる。
顔と名前が一致しないのかな?
「しってる。髪はセミロング。目はぱっちり。黒髪。そんで成績優秀。だろ?」
戒が一気に鈴ちゃんの特徴をあげてく。
それにおれはびっくりした。
だってなんか…結構詳しい。
「鈴ちゃんのこと…知ってるんだ」
戒をみると戒はにっこり笑った。
その笑顔は寂しそうな嬉しそうな複雑な笑顔。
そして一言「まあね」といった。
おれはその笑顔をみてなんだか不安になった。
なんでかわかんないけど戒をみて不安に思ったことははじめてだった。
鈴ちゃんの話はそこでおわった。
結局最後まで話さなかった。
そんな雰囲気じゃなくて。
少しの沈黙のあと戒は立ち上がりおれに手をのばした。
「帰ろっか」
そういっておれを掴んでたたせるとしばらくその手を離さなかった。
「戒…何?」
そうきくと戒は手を離した。
「手ちっちゃーー!!」
その戒の一言におれはむきになって「そんなことない」とずっとわめいてた。
その間鈴ちゃんのことを忘れられた。
別にふられたわけじゃないんだけど告白できなかったっていうのが情けなくて仕方なかったんだ。
いわゆる自己嫌悪ってやつ。
戒は結局途中寄り道をしながらも家まで送ってくれた。
おれ男だから別に送ってくんなくたっていいのに。
そういったら戒は「そお?モモふらふら〜っと迷子になってそうだから」とからかうようにいって笑った。
そして大きく手をふり小走りに帰ってった。
おれは戒がみえなくなるまで見送った。
戒は途中何度か振り返ると大きくおれに手をふった。
戒のそういう人懐っこいというか…愛想の異常にいいとこ羨ましい。
鈴ちゃんにはそういう奴のほうがあってるのかもなんて思っちゃって、それ考えてまた自己嫌悪に陥った。