スキってこと
「戒!ちょっ…気晴らしってなに??どこいくの??ってか早いよ!」
そうおれが言うのも聞いてくれない。
手はどんどん戒に引っ張られて先にいっちゃうし足はそれに自然についてく。
どうしようもできない。
すれ違う人はみんなおれらを見る。
一体何事?といったかんじに…。
走って走ってついたのは自然に囲まれた公園だった。
その時にはもうすでに息切れしてておれも戒もすぐに芝生にへたりこんだ。
「つっ…疲れた…」
おれは芝生の上にねっころがった。
「ほんと疲れた」
ははっと戒は笑っておれの横に寝転がった。
「疲れたって…戒がおれのこと引っ張ってここまで走ってきたんじゃん」
おれがは〜っと大きく息を吐くと戒はまたははっと笑った。
「まあねぇ。だってモモ元気なかったからー」
一瞬忘れてた鈴ちゃんのことを思い出した。
「うん…そうなんだー…」
おれがそういって深いため息をつくと戒は慌てたように「ごめん。なんかやなことでも思い出しちゃった?」とおれにきいた。
「うんん。大丈夫」
おれはにこっと精一杯笑って見せた。
そうしたら戒は「よかった」とくだけた笑顔をおれにみせた。
それから話をはじめる。
「あ〜あ!にしてもさっき俺らのこと皆みてたね!」
そういって戒は起き上がった。
「そりゃみるよ。だって戒ものすごいスピードでおれのこと引っ張るんだもん。しかも戒派手だし」
戒のオレンジ色の髪は夕日にあたってますます輝いてる。
「ははっ!まるで俺がモモいじめてるみたいだったかな?まわりからみたら」
そういって夕日を背ににこっと笑った。
「どうだろね。そうみえたかも。だっておれと戒は正反対なかんじだし。タイプだって違って見えるよ」
そうおれがいうと一瞬戒は寂しそうな顔をした。
「ん〜…タイプ違う…か。でもこーやってモモと仲良いのって正反対だからかもよ?」
そう戒はいっておれの目をみる。
戒の目はなんかおれの答えを本当に真剣に待ってるようにみえた。
「そうだね。正反対だからいいのかも」
そうおれがいうと戒はすごく嬉しそうな顔をした。
「そーだよね!」
この時おれは戒って良い奴だなーくらいにしか思ってなかった。
この時戒が嬉しそうにしてた意味だって理解できるわけなかった。