スキってこと
帰り道おれと鈴ちゃんは手をつないだ。
校門をでたとこで鈴ちゃんが手を差し出してきたんだ。
…おれからさしだしたかったんだけどさ。
そして今も手を繋いだまま歩いてる。
「あ〜あ。今日疲れちゃった〜」
鈴ちゃんがそういうとおれと手を繋いだままぶんぶん手をふった。
「委員会?」
そうきくと鈴ちゃんは頷いた。
「そ。1時間くらい話し合ってたの。美化委員って大変。リクはずっと諏訪君といたの?」
そうきかれておれは今日会ったことを全部話すことにした。
「うん。実はさ、今日昼休みから学校サボってたんだよね」
そういうと鈴ちゃんはすごく驚いた。
「サボったって…リクが!?」
鈴ちゃんがおどろいたのがなんだか少し嬉しかった。
いつも驚くのはおれの方だから。
「うん。戒に話があって。鈴ちゃんとおれのこと言おうと思ってさ」
そういうと鈴ちゃんは少し怪訝な顔をした。
「諏訪君…?諏訪君って結構学校サボるの?」
鈴ちゃんは明らかに戒に悪いイメージを持っている。
「うんん。いつもじゃないよ。今日はたまたま…。おれも戒も5時間目だけサボる予定だったんだけど寝ちゃってさ…」
そういってへへっとおれは笑ったけど鈴ちゃんはあまり笑わなかった。
「なんか心配。諏訪君に誘われてサボったの?」
鈴ちゃんは明らかにそして確実に戒を敵視してきてる。
「う〜ん…。そうだけど最終的に決めたのはおれなんだ。戒は学校戻ろうか?っていったけどおれがサボるっていったの」
なんか…母さんと息子の会話みたいだなーって思った。
「ふ〜ん」
そういって鈴ちゃんはあまりよく思っていないような顔をした。
そして次にはその心を言葉に出した。
「なんか諏訪君はリクに悪影響なんじゃないかって思っちゃう」
それにはちょっとおれもムカってきた。
昔から鈴ちゃんは結構偏見が多い。
そういうとこは苦手。
…そういうとこ含めて好きなんだけど。
「そんんことないよ。だって戒頭良いし」
そういうと鈴ちゃんは「知ってる」といった。
そしてそのまま沈黙が続いて気がつけば家の前だった。
気まずさは家の前まで続いた。
「…じゃあね」
おれがそういって背をむけると鈴ちゃんはおれの学ランの裾を引っ張った。
「リク」
それから背伸びするとおれにキスした!
一瞬のことで何がなんだかわかんなくてでもそうしたってことは理解できてておれは真っ赤になった。
そんなおれをみて鈴ちゃんは微笑むと「おやすみ」といって家へ帰っていった。
おれは頷くだけであとは言葉も返せなかった。
しばらく鈴ちゃんの行ったほうを見つめてた。
やっと感覚が戻ったときおれの顔はにやけてた。
家に入って部屋に向かうと真っ先にベッドにとびこむ。
それから一人でくすくす笑ってその笑いはしばらくとまんなかった。
気持ち悪いっておもうよね?
でもとまんなかった。
自分でも気持ち悪いって覆ったけどとまんなかったんだ。
それから鈴ちゃんに会いたくなった。
ケータイでメールをうつ。
返事を待つ間そわそわする。
返事が来る。
嬉しくなる。
そして次に返事を今か今かと待つ…。
おれの世界は鈴ちゃん中心で回っていた。
この時までは。