スキってこと
【待ってるよ】
そう鈴ちゃんにメールを送った。
戒には「帰って良いよ」っていったけど「モモ暇だろ」っていって一緒に残ってくれた。
その間はなしたことっていえば他愛ない話。
それぞれのクラスとか授業の話、昔の話。
鈴ちゃんの話は一回もでなかった。
戒が笑って体が揺れるたびにオレンジ色の髪が夕日にあたってきらきら輝いた。
「戒の髪すっげー光ってる」
そういうと戒は自分の髪を掴んでまじまじとみた。
「そう?」
「そうだよ」
そして次はおれの髪をみる。
「モモは…染めてないよね?」
「うん。地毛」
おれの髪は茶色い。
でもそれは生まれつきであって染めたわけじゃない。
「色素薄いよね」
そういって戒はおれの髪を眺めた。
「うん。よくいわれる」
そのまま奇妙な沈黙が続いた。
戒はただおれの髪をみておれは戒をみる。
変な感じ。
その時教室のドアが開いた。
ガラッ。
「リク」
そう優しくおれの名前を呼ぶ鈴ちゃん。
「鈴ちゃん」
おれは一気に笑顔になった。
けど鈴ちゃんは戒を怪訝な顔でみる。
「友だち?」
それはおれに聞いたんだろうケド顔は戒を凝視していた。
「うん諏訪戒って言うんだ」
そうおれが言うと鈴ちゃんは安堵したような笑顔になった。
「そうなの」
「そんじゃ俺帰る」
戒ががたっと椅子から立った。
そしてそのまま無言で教室をでていこうとする。
おれは慌てて戒の学ランの裾を掴んだ。
「戒!」
戒はきょとんとした。
「今日ありがとうね」
何回も言うのもしつこいかなと思ったけどもう一度いいたかった。
戒はにこっと笑うと「お安い御用ですよ」といって笑った。
それから手をひらひらさせて玄関の方へ歩いていった。
「なんか…意外だよね。リク諏訪君と仲良いって。そういえばたまに一緒にいるとこみるけど」
そういいながら鈴ちゃんは戒が行った方をみてる。
「うん…。意外ってよくいわれる」
「いじめっこといじめられっこみたいだもんね」
そういって鈴ちゃんはふふっと笑った。
「ひどいな〜。鈴ちゃんのおれのイメージいつまでも
いじめられっこなんだもん」
そういってむくれると鈴ちゃんは背伸びしておれの頭を撫でた。
「ごめんね」
それだけでおれは真っ赤になって何も言えなくなってしまった。
そんなおれをみて鈴ちゃんは微笑むと「帰ろっか」といって教室のドアをさした。