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オーストリアGPの大クラッシュ

初投稿です。

拙い文章ですが読んでいただけると嬉しいです。

感想等もらえると尚喜びます。

205X年、6月末……

ハイパーフォーミュラ 第11戦 オーストリアGP(グランプリ)


「天気の急変によりヘビーウェットとなったこのレースも残りは3周! 先頭を走るは【スバル・STI】の『ベルム・スミス』!」


会場と国際映像には、実況のアツい声が響き渡る。


「彼はシーズン序盤こそマシンの扱いに苦しみチームメイトの後塵を浴びる結果となりましたが、今では調子を取り戻しつつあります! しかし、その後方コンマ7秒の所には【オラクル・レッドブル・レーシング】のエースドライバー、『マティアス・フェルベーク』が迫ってきている!」


スミスの青地に黄色のスポンサーロゴが入ったマシンに、紺色を中心にに黄色と赤のロゴが入るマシンが迫る。タイヤはフェルベークの方が明らかにグリップと排水性能を残している。

それもそのはず、ピット戦略の違いだ。レッドブルの方がスバルより数周後にタイヤ交換を行なっている。

残り2周となる。差はコンマ4秒。逃げ切れないのではないか。焦るスミスに、チームから無線が入る。


「残り2周だ!! プッシュしろ!! 逃げるんだ!!!」


1コーナーからほぼ直線の2コーナーにかけてブレーキングとスリップストリームで並びかけられる。

サイドバイサイド。3コーナーのブレーキング勝負。が、青いマシンのリアが大きく流れる。タイヤと路面の間に水が入り込み完全に接地しなくなるハイドロプレーニング現象。


「ぐっ……!」


必死にマシンを立て直そうとスミスは努力した。しかし、一時的に接地していないマシンの前にはどうすることも出来なかった。

そのままコース外へ勢いよく飛び出して、ほとんど減速出来ないままに激しくウォールと激突。


「ああーっとぉ!!! ベルム・スミスがクラッシューッッ!!!!! SC(セーフティーカー)が出動します! かなり激しくウォールに激突しましたが彼は無事なのでしょうか……」



スバル・STIのリザーブドライバーである私、『秀嶋(ひでしま) 凛花(りんか)』はチームのパドックで映像を見ていた。

画面に映るのは、チームメイトが大クラッシュする姿。マシンは大きく破損し、パーツが瓦礫のようにあちこちに散乱している。


「大丈夫なの、アレ……」


レースはそのままSC先導のままチェッカーフラッグが振られ幕を下ろした。

このクラッシュにより、スミスは手首と指、鎖骨の骨折、軽い脳震盪などの大怪我を負い、夏休みまでのシーズン前半残り四戦を全て欠場することとなった。

正規のドライバーが走れない。そうなればリザーブドライバーが代役として出走することになる。そう、私が彼が欠場している間、世界最高峰のカテゴリーで走ることになる。

スバル・STI・HF(ハイパーフォーミュラ)チームは最近好調。私はスミスやもう1人の正規ドライバーである『ジェンソン・テイラー』と間違いなく比較される。

でも、逆に自分の実力を証明するチャンスでもある。緊張とドキドキが止まらない。

来週はイギリスGP。すぐに準備に入らなければならない。そんなことを考えながら、私は床に就いた。


翌日以降、私はメディアデーである木曜日までできる限りの時間をシミュレーターで過ごしていた。イギリスGPの舞台はシルバーストン・サーキット。一周5.891km、全部で18のコーナーがある。

平均して約3Gの横Gを受け続けるこのサーキットは、体力が男性より劣る私にとっては厳しいスタートになりそうだ。

せめて、コースの攻略をライバル達より少しでも出来るようにして体力の少なさをカバーするしかない。

シミュレーターは様々な気象状況を再現できる。この数日を通して、ある程度トップドライバーと渡り合えるだろうドラテクやマシンのセットアップが固まってきた。チームメイトとの差はあるが、ポイント争いくらいは出来ると信じたい。


ついに迎えた木曜日。

日本人女性が、名称変更前含めて史上初めてHF(ハイパーフォーミュラ)に参戦することとなり、HFへの名称変更後としては女性初。

各国のメディアからすれば特大スクープ、私は人生最大級のメディア対応に追われることとなった……


「リンカ選手、先週のレッドブル・リンク(オーストリアGP)でのクラッシュにより急遽出走が決まりましたが、どのようなお気持ちでしょうか?」

「正直に言って少し緊張してますし、ベルムのクラッシュにはとても驚いています。でも、自身の力を証明するチャンスでもあるのでワクワクしている所もあります。」

「ありがとうございます、ところでかなりマシンが破損していましたがイギリスでの走行に問題はないのですか?」

「チームが既に公表していますが、元々イギリスGPで新しいパーツを2台ともに投入する予定でした。ですので、大きな影響はありません。」

「それは良かったです。では、女性というのは他のドライバーにフィジカル面で劣ってしまい、苦しい戦いになることが予想されますが、その辺はどう考えていますか?」

「自分なりにフィジカルトレーニングとシミュレーターによる練習で差は出来る限り縮めています。出来る限りのことを尽くして、走り抜きたいです。」


………


「最後に、期待に沸いているであろう母国日本のファンにメッセージをお願いします!」

「えー、まずはみなさん、去年に私がスバル・STI・HFチームのリザーブドライバーとなってから日本人女性初のHFドライバーが誕生するのでは、と期待されていた方も多いのではないでしょうか。

今回、代役という形ではありますがそれがついに達成出来ました!

皆様の温かい支援あってこその成果だと思います。本当にありがとうございます!

ここからのレースは私にとって試練の連続になるとは思いますが、一つでも高いポジション、一つでも多いポイントを持ち帰れるように頑張ります。

応援よろしくお願いします!」


質問ラッシュには疲れてしまう。仕方ないことなのだが……

メディア対応を終えた私は、チームエンジニア達と共にトラックウォークに向かった。再舗装された路面や高さが変更された縁石などをチェックする。


「だいぶ変わったわね……数字で見るよりずっとかも、踏めるところはガッツリ踏めそう。ねぇ、ジェンソン……」

「ああ、これまで以上にアグレッシブに攻めていけそうだ。だが、コーナー出口のアウト側の縁石は少し滑るかもしれない。トラックリミットにも注意だな。」


凛花担当となるレースエンジニア、『ルーカス・ホワイト』とも、コースについて話し合う。


「リンカ、路面がかなり変わっているかもしれない、明日のフリー走行でシミュレーターとの差を詰めて行こう。」

「分かった、しっかり準備しなきゃね。」


こうして私達は一日のスケジュールを終えた。

明日はついに実車を走らせる。コンディションを整えるため、私は早めに寝ることにした。

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