終わりを告げる鳥居
その鳥居は突如として現れた。
アーケードの光柱から数歩進んだ先。
建物の角を曲がったところに、“現実には存在しないはずの”構造物が佇んでいた。
赤錆びた木材でできた鳥居。
柱の表面には苔のような影がまとわりつき、中央の額束には文字が彫られている。だがそれは現代語ではなく――
『時空ノ峡間』
少女が目を見開いた。
声にならない息が漏れる。
「……ここに戻ってきちゃいけなかった」
その言葉が合図だったように、鳥居の奥に何かが揺れた。
それは影でも人影でもない。
空間の層そのものが波紋を描いているようだった。
鏡の男が急ぎ足で歩み寄る。
鏡に反射した鳥居の像は通常と違い、逆向きに映っていた。鏡像が空間を“誤認”している証拠だ。
「これが……鍵かもしれない」
マスクの男が低く囁く。
「“出口”と“終着点”のあいだにある。どちらに行くかは選べるということか」
ガブリエルは無言で黒い傘を見つめていた。
傘は変わらず半開きのまま。だがその内側には――
ひと筋の血のような痕跡が現れていた。
観測者の声が再び響く。
今回は今までとは違い、“特定の誰か”に向けられていた。
――《次に名を呼ばれるのは、あなたです》
――《問いへの回答期限まで、残り三回の拍動》
――《鳥居を抜ければ、“戻り方”が変わります》
少女が唇を噛んだ。
傘を持つガブリエルが彼女の方を見る。
「行くの?」
少女は一瞬だけ瞳を伏せたが、すぐに顔を上げた。
「行かなきゃ。でも――みんなと一緒に」
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