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アンドウ ミカ様 6列目 A/B プレミアム会員
もう少し車の運転が得意だったら。
そんな歌があった気がする。あれは「ピアノが弾けたなら」か。
父がよく歌っていたことを思い出す。
仕事柄、帰省はいつも世間様の1ヵ月遅れ。
公共交通機関が比較的空いているのは確かにありがたいけれど、
“怪獣”を連れての移動は、それでも大変で。
「お困り事があればいつでもお声がけくださいね。」
私とよく似た背格好の運転士さんは昨晩、そういって私たちを迎え入れた。
運転、お好きなんだろうか。
時々、乗務員や周囲の乗客に嫌な顔をされる事もある。
不思議とそういう時は怪獣も大暴れすることが多い。
駄々をこねる怪獣を見るたびに「マイカーなら…」と唇を噛む。
夫は「お前は、料理は上手いのに運転はダメだなぁ。」と笑っていた。
もう少し運転が得意だったら。あの雨の日、あなたを駅まで迎えに行けたのに。
亡きあなたの面影が日に日に増していく、怪獣の寝顔を撫でた。




