04 女の子の気持ちわかってないんですよね。
「ところで、ここはどこなんだよ。気づけば、白い壁に囲まれてる場所にいるし、何処にも出入り口がないじゃないか。」
「これはあれか。◯ックスしないと出られませんの部屋なのか!? そして、そこに女神様が現れた……もしかして、そういうことですか!!!?」
「はぁ……ほんと最低ですね。」
「実は言い忘れてましたが……
あなた、もう死んでるんですよ。」
「はっ……!? 俺が死んだ?」
「いやいやいやいや……ん……確かに……」
俺は女の子に振られた。そこまでは覚えている。
だけど——その後の記憶がない。
「まさか、失恋のショックで……自殺!? ……それで、死んだのか!?」
「あー、多分、違います。」
腰まで届く金とピンクのグラデーションの髪を揺らしながら、どこか気怠そうな表情をしていた。
「生死を司る神様ってね、小さい虫とか動物とか、生ませるときにデータを一括インポートするんですよ。」
「いちいち手動で『ポチッ』ってやってたらキリがないじゃないですか。」
「イナゴの大群とかは、そのインポートミスの結果だったりするんですけど。」
「たまに、大量に現れるイナゴとかの生物って女神様のミスだったの!?」
「そうですよー。でね、殺すときもちゃんと選定はするんですが……一応、ノルマってのがあるんです。」
「なので、虫なんて、魅力値が少ない生物ですし。
まぁ、消しても誰も悲しまない。とりあえず、魅力値低いやつは、大量に削除しとこっかー♪ ってなるわけです。」
「おい、待て待て待て待て!!!」
「私もよくやるんですよねぇ。」
「たとえば、女神の信仰度、10以下は、一括削除!そんな個別の事情なんて、いちいち調べてられませんし。」
「多分、あなたもその流れで、魅力値てフィルタリングされて——ズバッと、デリート☆」
「デリート☆じゃねぇよ!!!」
「削除完了!残業なし!今日は飲むぞー!って、感じですね! わかります、その気持ち!」
「わかるかあああああああ!!!!」
「おい、俺はそんな理由で女神に消されたってことか!?!?」
「うん、そうですね。」
「神がそんなことしていいのかよ! それで、一人の人間を消してるんだぞ!?!?」
「まぁ、いいんですよ。」
「ちょっと失敗したら、口封じに異世界転生させるんで。」
「口封じ!?!?!?!?」
「他の世界の女神様と人数合わせで、交換したりしますし。そこは、お互い様です。」
「でもね、みんな異世界転生できるなら喜んでますからね!」
「神様!失敗で殺してくれてありがとう!『チート能力がもらえて異世界転生できるー!』って、ほんと意気揚々ですよ。」
「おおお、それなら俺も転生させてくれ!!」
「……あのですね、魅力0の人を転生させたくなる女神様っています?」
「……は?」
「だって、転生先の世界が可哀想じゃないですか。」
「例えばですよ。 他の世界の女神に『この人、転生させてくれませんか?』ってお願いするじゃないですか。」
「で、中身を見てみたら——」
「魅力が0。リサイクルできないゴミも同然。」
「そんなの送ったら、相手からしたら、嫌がらせかな? 嫌われてるのかな? ってなりますよね?」
「さらに、『この人にチート与えていい生活させてください!』って頼んだら、相手からしたら、めちゃくちゃ悪い気分になりません?」
「……」
「やっぱり、魅力があるからこそ、転生させて活躍させたいな♪ってなるわけです。」
「……」
「それがですよ……」
「男って、すぐ簡単に転生させろって言うんですよね。」
「でも、それがどれだけ大変なことかわかってない。」
「今日は、転生はちょっと……とか。気分が乗らないなぁとか、生理だからきついとか、転生処理をやりたくないって日がたくさんあるんです。」
「なのに、転生転生転生って。」
「ほんと、あなたみたいなモテナイ男って、そういう女の子の繊細な気持ちがわかってないんですよね。」
「俺、異世界転生すらできないレベルで終わってるのかよ!!!」