9、特効薬を試してみよう
誤字脱字など読みにくいこともあると思いますが、よろしくお願いします。
誤字報告とても助かっています。ありがとうございます。
「こちらが我が家です」
レミーさんが一軒の家の前に止まり、手を広げてドアを示した。
お世辞にも立派とは言えない…はっきり言ってボロ家だ。
窓は割れたところに板が打ちつけてあるし、屋根も吹けば飛ぶような様相である。
「ボロいですね…」
「シッ。静かに」
ガブリエルの呟きを慌てて止める。
「さあさあ、ボロいところですがどうぞお入りください。ロジー、昨日話したソフィアさんとガブさんが来てくれたよ」
レミーさんは聞こえたのか聞こえてないのか気にしてない様子だ。
「お邪魔します…」
ドアを入るとすぐにダイニングキッチン。
そしてその奥の部屋には扉がなく、玄関からベッドの足元が見える。
「いらっしゃいませ。こんな所まで来ていただいてありがとうございます」
ベッドからか細い女性の声が聞こえてきた。
レミーさんに促されて奥の部屋に入ると、そこには私の一つ下とは思えない、顔も腕も灰色にくすんだ痩せ細った女性が、ベッドに起きあがろうとしていた。
「!!」
想像よりかなり深刻な彼女の姿に、わたしは息をのんでしまった。
「ロジー、大丈夫か?」
レミーさんがベッドに起きあがろうとする彼女を、手伝って座らせると、彼女は悲しそうに笑った。
「こんな姿で、びっくりされたでしょう?この度は兄を雇っていただいたとか。本当にありがとうございます。妹のロジーと申します」
レミーさんと同じくふんわりした茶色の髪に目尻が垂れた優しそうな茶色の瞳だ。
体が辛いだろうに、礼儀正しいいい子だ。
「初めまして、突然お邪魔してすいません。私はロイド商会会長の娘でソフィアと申します。こっちは私のボディガード兼ロイド商会スタッフのガブリエルです」
私が挨拶すると、ガブリエルも、
「ガブリエルです。ガブさんとお呼びください」
と挨拶した。
相変わらず距離感がわからない挨拶だ。
「体が辛いでしょうに、無理をさせてごめんなさい」
「いえ、こちらこそ。お忙しい中ありがとうございます」
あまり長引かせても体に負担がかかる。
さっそくステータスから見ていこう。
「それでは失礼します」
私はロジーに近づくとステータスを見た。
〜ロジー、15歳。器用B、知能B、コミニュケーションA。
おお!すごい高い!
魔力はほとんどないが、とても優秀だ。
だが…状態異常サンド病、後期。
かなり状況は深刻なようだ。
私は覚悟を決めた。
「ロジーさん、レミーさん、お話があります」
私は2人に向き直って言った。
「今状態を見させていただいたところ、かなり病状は悪化しているようです」
2人は覚悟をしていたのかこくりと頷いた。
「昨日、レミーさんが帰った後、私とガブリエルは心当たりのところへ特効薬の加工方法を聞きにいったのです。幸い加工法を知ることができ、加工もそんなに難しくないものだったので、昨日ガブリエルとさっそく加工しました。今、手元に特効薬があります」
「「!!」」
2人は驚きのあまり言葉も出ないようだ。
「ただ、これまで特効薬はまだ誰にも使ったことがありません。どんな副作用があるかわかりませんし、完治しないかも、効かないかもしれません。それでも試してみますか?」
ずるい言い方だったろうか…。しかし女神のレシピとは言え、確証がないことは言えない。
「もちろん、試します」
ロジーさんは即答した。
「ロジー…もう少し考えなくてもいいのかい?」
レミーさんが心配になる程だ。
「何を言っているのか兄さん、今だって何もできずにただ死を待つ状況なのよ。チャンスがあるならなんだって試してみたいわ。リスクがあるなんて当たり前よ」
「ロジー…」
うん、強い子だ。
今までずっと辛かったろうにこんなに前向きに考えられるなんて。
何度でも言おう、いい子だ。
「本当にいいのですね」
私が再確認すると、
「「はい、お願いします」」
と2人のしっかりした返事が返ってきた。
「ではガブリエル、特効薬を出してくれる?」
「はい、ソフィア様。こちらに」
ガブリエルから受け取った特効薬の小瓶をロジーに渡した。
「これが特効薬です。1本飲み干せば治療完了です。どうぞ」
ロジーさんは震える手で小瓶を受け取って、背をレミーさんに支えられながら薬を飲み切った。
読んでいただきましてありがとうございました。
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