3、料理人レミー
こちらは続編となります。
誤字脱字など読みにくいこともあると思いますが、よろしくお願いします。
誤字報告とても助かっています。ありがとうございます。
「あの…少しお話しよろしいでしょうか?」
ガブリエルは最近習得した営業スマイルで声をかけた。
その声を聞いて、新人パティシエの彼はゆっくり顔を上げた。
優しげな茶色の瞳が私たちを見つめた。
うん、近くで見てもいい人そうだ。
私はここ数年ですっかり人を見る目が養われたと自負している。
この容姿によってくる人、ロイド商会と縁を結びたい人などが幾度となく絡んでくるおかげで、すっかり害意ある人とない人の区別がつくようになったのだ。
ステータスの恩恵もあるが。
ガブリエルが確認するように、後ろにいる私を見たので軽く頷く。
「怪しいものではございません。私はロイド商会のガブリエルと申します。先ほど店内からやり取りを見させてもらっていたのです」
「あー、お恥ずかしい所を見られてしまいました。どうやらまた、店主の気に入らないことをやってしまったようです」
私はガブリエルの後ろから出て新人さんに向かって言った。
「急にお声がけしてすいません、でも見ていた感じ、あなたは怒られるようなことをしたようには思いませんでしたが」
前に出てきた私に少し驚いたような顔をしたその青年は、また項垂れた。
「いつもこうなんです。私には何が悪いのかわからない。そしていつも最後にはクビになるんです。自慢じゃないですが、私は作り方を一度でも見て、味を確認したものはだいたい作れます。あのクリームも全く同じ出来栄えだったはずなのに」
あー、それだ、原因。
この街の料理人は皆プライドが高い。
その料理人達が研鑽を積んで作り上げた味をいとも簡単に作られてはプライドが傷ついたに違いない。
「もしかしたら原因に心当たりがあるような無いような…。まあ、それはおいおい話すとして、良ければ一度ウチに来てもらえませんか?」
新人さんは怪しい物を見る目つきで私を見た。
「ウチだって?」
「いやいや、怪しいものではありません。私はロイド商会会長の娘でソフィアと言います」
「ロイド商会ってあの?」
「はい、私は今、私が新しく作るレストランで、私のレシピで料理を作ってくれる人を探しているんです。レミーさんはすごいスキルをお持ちです。私の店でそのスキルを存分に発揮してみませんか?」
新人さんは呆然と私を見つめた。
「僕がすごいスキルを持ってるって?それとなぜ名前を?」
「はい!1度見ただけで料理を再現できるのはとてもすごい事だと思いますよ。それと名前は…お店で話しているのを聞いたんです」
「僕が…すごいだって?」
よし、もう一押し。
「ですから一度、我が家で私の料理を食べてくれませんか?私の店で働くかはその後考えていただければいいので」
「君が料理を?本当に食べるだけでいいの?」
「はい。食べてもらえれば、私がどんな料理の店をやりたいのかをわかってもらえると思います」
レミーさんにとっては突然の出来事で簡単に決められるものではないだろう。
「とりあえず、食べてみるだけでもいいなら」
うん、いい流れだ。
「ではロイド商会の馬車を迎えにやりますね。明日のご都合はいかがですか?」
「え?は、はい。大丈夫です」
「では明日お迎えにあがりますね。場所と時間はどうしますか?」
「えっと、それじゃあ場所はここで、時間はこの店が終わってからでお願いします」
「はい、それではまた明日。楽しみにしてますね」
私はガブリエルに目で合図すると、ガブリエルはレミーさんに挨拶した。
「ではレミーさん、また明日」
私達が角を曲がると、後ろからレミーさんの声が聞こえた。
「なんだったんだ…現実か?」
読んでいただきましてありがとうございました。
引き続き次回もお読みいただけると嬉しいです。
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