2、新しい出会い
誤字脱字など読みにくいこともあると思いますが、よろしくお願いします。
誤字報告とても助かっています。ありがとうございます。
「はー、なかなか良さそうな人って見つからないね」
私は、ガブリエルと入ったモルドールのカフェでケーキと紅茶を頼んだ。
私とガブリエルは、ここ1年ほど新しい店のスタッフになってくれそうな人材を探していた。
まず店を任せられる店長兼料理人1人、調理スタッフ1〜2人、ホールスタッフ1人、できれば2人。
最低でもこのくらいは欲しい。
しかしやはり妥協はしたくない。
「焦らず探しましょう、きっとどこかでいい巡り合わせがあるはずです」
ガブリエルはそう言ってくれるが、私は人材探しに少々疲れてきた。
「はあ、いっそ、良さげな人をスカウトして一から育てようかな」
そうすれば、小娘がオーナーな店でなんか働けるか!とか言われなくて済むんじゃないか。
更に、こちらの用意する調理魔道具も抵抗なく使ってもらえるかも。
なんかどんどんいい考えに思えてきた。
「よし!そうしよう!育てよう!」
そうと決まれば探す範囲はかなり大きくなる。
例えば今この店の奥でパティシエさんに怒られている新人さんとか。
「おい、新人!誰がクリーム泡立てろって言ったよ。後片付けだけしとけって言っただろ」
奥から結構なボリュームで声が聞こえてくる。
「すいません、片付けが終わったので、何かお手伝いしようと思いまして」
人の良さそうな茶色の髪の背が高い青年が、こちらに背を向けているパティシエに謝っている。
「新人のお前の作ったクリームなんて客に出せるかよ。ほら、味見してみろ」
パティシエは泡立てたクリームをヘラですくうと、新人さんの顔に向かって飛ばした。
新人さんは頬についたクリームを指ですくうと、自分の口に入れた。
「クリームの味に問題はないようですが」
それを聞いたパティシエはイライラした様子でクリームの入ったボウルを流しに投げ入れた。
「うるさい!ちょっと器用だからって調子に乗るな!俺の言う通りできないやつはいらないんだよ!文句があるなら辞めちまえ!」
パティシエさんはそう怒鳴るとどこかに行ってしまった。
「ひどい!あの新人さん、何も悪いことしてないんじゃないの?」
私がガブリエルに言うと。
「今聞いた様子ではそう見えますね。まあ、それまでに何があったのかまでは分かりかねますが」
新人さんは淡々と流しにあるボウルを洗い、飛び散ったクリームを拭き取るとコックコートを脱いで裏口から出ていった。
「ガブリエル。後を追ってみようよ」
私は立ち上がって言った。
「え?今の新人さんの後を追うのですか?ちょっと待ってください」
ガブリエルは慌ててケーキを1口で食べると席を立ってお金を払った。
「さあ、行きましょう」
ガブリエルがすっかり食いしん坊キャラなんだけど。
カフェの裏口の方へ回ると、さっきの新人くんが裏口のドアの下にある段差に座って項垂れていた。
「はあ…どうして僕はいつもこうなんだ。どの店でも良かれと思ってやった事でいつもいつも怒らせてしまう。ここをクビなったらどうすればいいんだ」
どうやらこの店の前にも同じような事があったようだ。
ここは失礼してステータスを見せてもらおう。
「えっ?すごいんだけど」
彼の料理スキルがすごい。
料理S、器用S、記憶力S。
残念ながらコミニケーション力はとんでもなく低いが、料理人としてトップレベルじゃないだろうか。
称号も「神の舌」って何コレ?
「ガブリエル!あの人すごい!連れて帰りたい!」
興奮して私が言うとガブリエルは察してくれたようだ。
そっと彼に近づき優しく声をかけた。
読んでいただきましてありがとうございました。
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