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弱小言霊(ヴェルブム)の覚醒–言葉を紡ぐ者–  作者: メロンクリームソーダ姫
第三章 七つの大罪編
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第27話 不気味

翔太は深い溜息をつきながらソファに身を沈めた。戦闘から戻ってきたばかりの身体は、重力に負けるようにどっしりと疲れ切っていた。目を閉じると、五十嵐の最後の姿と悟志の怒りに満ちた表情が浮かび上がる。何度目かわからないが、彼はその光景を振り払おうと首を振った。


「少し休んだら?」


フローリアがキッチンから顔を出し、温かいハーブティーを持って来た。優しい香りが部屋に広がる。彼女の声は静かだが、その眼差しには翔太を心配する思いがはっきりと見えた。


「ありがとう。でも、寝ても悪夢を見るだけだと思う。」

翔太は無理に微笑もうとしたが、その表情は痛々しいものだった。


「自分を責めないで。五十嵐はきっとあなたの決断を理解している。」

フローリアは彼の隣に座り、そっと肩に手を置いた。「でも、悟志の怒りも無視しないで。彼もまた、友を失った悲しみの中にいるのだから。」


翔太は何も言わずに天井を見上げた。フローリアの言葉が正しいことはわかっていた。けれど、悟志と再び向き合う勇気が今の彼にはなかった。


一方、その頃翔太の代理で警視庁に向かった悟志は、冷たい視線の中で事情聴取を受けていた。捜査官たちは悪魔との戦闘など信じていない様子だった。形式的な質問が続く中、悟志の心は怒りと後悔に支配されていた。


「五十嵐を救える方法は、他になかったのか…」

彼は心の中で何度も自問していた。翔太を責めたものの、本当は自分にも非があると感じていた。もっと早く行動できていたら、もっと強くなれていたら――。


しかし、そんな葛藤を振り払うように悟志は拳を握り締めた。「嫉妬の悪魔を倒すまでは、翔太を許すつもりはない。」彼はその思いを胸に、警視庁を後にした。


数日後


夕暮れ時、下校時、悟志が疲れた身体で駅前のベンチに座っていると、ポケットの中でスマホが震えた。無意識に取り出すと、差出人不明のメッセージが届いていた。


差出人:不明

件名:五十嵐の意志はまだ生きている

本文:彼は完全には消えていない。真実を知りたければ、この場所へ来い。


メッセージには座標が記されていた。それを見た瞬間、悟志の心臓は一瞬止まったように感じた。


「五十嵐が…生きている?」

彼は信じられなかったが、何かが彼を動かした。立ち上がり、メッセージに示された座標を確認する。場所は上野公園だった。


「これは罠かもしれない。」冷静に考えようとする一方で、彼の足はすでに上野公園へ向かって歩き出していた。胸の中には、翔太にも告げずにこの場へ向かう罪悪感がわずかにあったが、それを振り払うように足を速めた。


夜の闇に包まれた上野公園は、不気味な静けさに包まれていた。悟志が慎重に中へ足を踏み入れると、広い空間に灯された一本の蝋燭が目に入った。その薄暗い光の中、誰かが立っていた。


「悟志君、よく来たね。」

声が響く。低く、しかしどこか懐かしい響きがあった。


「誰だ!」

悟志は緊張しながら声を張り上げた。その声に応じるように、立っていた人物が一歩前へ進み出る。


「俺だよ、五十嵐だ。」

その瞬間、悟志の目は信じられないものを捉えた。そこに立っていたのは、確かに五十嵐の姿だった――しかし、その目は以前のような輝きではなく、どこか空虚で冷たいものに変わっていた。


「お前…本当に五十嵐なのか?」

悟志は恐る恐る問いかける。


「そうだ。けれど、今の僕は…お前たちが知っている五十嵐じゃない。」

彼は意味深な笑みを浮かべた。


次々と謎が深まる状況の中で、悟志は五十嵐と名乗る存在に向き合うこととなった。しかし、この再会が何をもたらすのか――それは、まだ誰にもわからない。

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