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弱小言霊(ヴェルブム)の覚醒–言葉を紡ぐ者–  作者: メロンクリームソーダ姫
第三章 七つの大罪編
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第26話 発狂

強欲の悪魔の体がひび割れるように震え始めた。内部から光が漏れ出し、その光が悪魔の冷酷な顔を焼き付けていく。翔太の声に応じるように、五十嵐の意識が悪魔の支配を突き破ろうとしていた。


「翔太…でも、もう遅い…俺は…!」

五十嵐の声が途切れ途切れに聞こえる。その言葉には、未練と絶望が入り混じっていた。


「そんなことはない!お前なら、戻れる!」翔太は必死に叫んだ。「お前が俺を信じたように、俺もお前を信じる!だから、諦めるな!」


強欲の悪魔が憎悪に満ちた叫び声を上げた。「お前の無駄な情熱が、彼をさらに苦しめている!彼が望むのは解放だ!」

悪魔は再び翔太に向けて剣を振り上げたが、その動きは鈍くなっていた。内部で五十嵐が必死に抗っている証拠だった。


「翔太…お願いだ…殺してくれ…!」

五十嵐の声が今度ははっきりと聞こえた。彼の心が悪魔に飲み込まれる前に、最後の意志を伝えようとしているのだと悟った翔太の胸は張り裂けそうだった。


「お前を殺すなんて…そんなの無理だ…!」

翔太の声は震えていた。しかし、彼の目は決意に満ちていた。もし、五十嵐の苦しみを終わらせることが彼の願いなら、翔太がそれを実行するしかない。


強欲の悪魔が最後の抵抗を見せ、周囲に衝撃波を放った。その勢いで翔太は後退しそうになるが、踏みとどまった。そして、ポケットから五十嵐が託してくれた小さなペンダントを取り出した。それはかつての友情の象徴であり、五十嵐がどれだけ翔太を信頼していたかを物語る品だった。


「これが最後だ、五十嵐…」翔太はペンダントを握り締め、力強く前へと踏み出した。強欲の悪魔が剣を振り下ろすその瞬間、翔太は隙を突いて悪魔の胸に持っていた護身用のナイフを突き刺した。


悪魔の咆哮と共に、五十嵐の姿が見えた。彼の目には涙が溢れており、それが全てを物語っていた。「ありがとう、翔太…俺を救ってくれて…」


悪魔の体が崩壊し始め、五十嵐の姿も消えていく。「お前の意志は俺が引き継ぐ…!」翔太は叫びながら、目を閉じた。


翔太が目を開けた時、そこには悟志が膝をついて震えている姿があった。彼の目は恐怖と混乱で乱れ、まるで現実を拒絶するかのように呟いていた。


「五十嵐…五十嵐が…なんで…翔太、お前が…!」

悟志は突然立ち上がり、翔太に掴みかかる。「なんで殺したんだ!俺たちは彼を助けるんじゃなかったのか!」


「悟志…」翔太は言葉を失った。自分の決断が正しかったのか、迷いが胸に押し寄せる。しかし、強欲の悪魔を倒したことで五十嵐が救われたと信じるしかなかった。


悟志は狂気の目で翔太を見つめ、拳を振り上げた。「お前は裏切ったんだ!俺たちの友情を…!」


翔太は拳を受け止めながら涙を流した。「俺だって…俺だってこんなことしたくなかった!でも、五十嵐は俺に頼んだんだ…!」


その時、嫉妬の悪魔が遠くから冷ややかな声を上げた。「面白いな、人間たちよ。友情も信念も、結局はこんな形で崩れるのか。」

悪魔は翔太と悟志を嘲笑しながら、黒い霧を纏い逃げていった。


「逃がさない!」悟志は追いかけようとするが、翔太が肩を掴んで止めた。「無理だ、今は力を蓄えないと。」


悟志は激しく息をつきながら、拳を振りほどいた。「お前なんか信じられるか…翔太。」


翔太は俯きながら悟志の背中を見送った。「俺が間違っていたとしても、五十嵐を見捨てることだけはできなかった…」


戦場に静寂が戻り、遠くで嫉妬の悪魔の笑い声だけが響いていた。

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