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弱小言霊(ヴェルブム)の覚醒–言葉を紡ぐ者–  作者: メロンクリームソーダ姫
第三章 七つの大罪編
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第23話 寄生

夜が更けてきた頃、三人は情報を整理していた。フローリアが渋谷、悟志が原宿、そして翔太が新宿の担当で、各自手分けして動くことになった。だが、緊張感は依然として消えない。強欲と嫉妬、二つの悪魔を相手にする彼らにとって、見えない敵を追うというのは、言葉以上に難しく恐ろしいことだった。


翔太はふとスマホを手に取り、再び五十嵐に連絡を取ろうとした。だがその瞬間、画面が暗転し、突然の着信音が部屋に響き渡った。相手は五十嵐だった。翔太は驚きつつもすぐに応じた。


「翔太、急ぎの連絡だ」五十嵐の声はいつにも増して緊張感を帯びていた。「今、新宿で異常な状況が発生している。人々が急にお互いに暴言を吐き始め、理由もなく争い始めたんだ。これは嫉妬の悪魔の影響だと思われる。」


翔太の胸に冷たい恐怖が走った。「お前大丈夫だったのか。良かった。新宿でそんなことが…すぐに向かうよ。」


「気をつけろ。京子の姿は確認できていないが、嫉妬の悪魔が何かを企んでいるのは間違いない。状況がさらに悪化する前に何とかしないと大変なことになる。」


電話を切った翔太は、すぐにフローリアと悟志にその情報を共有した。二人は顔を見合わせ、決断を下す準備を整えていた。


「翔太、あなたが新宿を担当しているから、そこでの行動はあなたに任せるわ」とフローリアが言った。「でも、くれぐれも一人で無理をしないで。何かあればすぐに私たちに知らせて。」


「もちろん。嫉妬の悪魔と強欲の悪魔が姿を現すなら、俺もこの目で直接確認したい」と翔太は力強く頷いた。「気をつけろよ。奴らは俺たちの想像を超えて狡猾だ。何か仕掛けてくるかもしれない。」


翔太は覚悟を決めて新宿へと向かった。夜の新宿はネオンに彩られ、通常なら人々の賑わいで溢れているはずだが、今夜はどこか異様な雰囲気が漂っていた。路地の奥では小さな争いが頻発し、些細なことで激昂する人々の声が街中に響き渡っていた。


「これが嫉妬の悪魔の影響か…」翔太は呟きながら、慎重にその場の状況を観察した。


すると、ふと視界の端に不気味な緑色の光が瞬くのを見た。その光は人混みの中で揺れ動き、まるで彼を誘うように遠ざかっていく。翔太はそれが嫉妬の悪魔の力によるものだと直感し、すぐさまその光を追いかけた。


狭い路地に差し掛かった頃、翔太は突然背後に気配を感じた。振り向くと、そこには一人の男が立っていた。中年のサラリーマン風だが、その目はどこか狂気を帯びており、彼の顔には嫉妬と怒りが浮かんでいた。


「お前、何を見てるんだ!」男は突然、翔太に向かって詰め寄ってきた。「俺のことをバカにしてるのか?」


「違う、俺は…」翔太は言いかけたが、男の拳が突然飛んできた。避けようとしたが、路地が狭く、避けきれなかった。男の拳が翔太の肩を捉え、彼は少しよろけた。


「落ち着け!」翔太はなんとか説得しようとした。悪魔の影響が強まっているのを感じた翔太は、手加減できないと判断し、素早く反撃に出た。彼の拳が男の腹に食い込み、男はその場に崩れ落ちた。


「すまない…」翔太は無意識に呟いたが、すぐに立ち去った。今は一刻も早く嫉妬の悪魔を見つけることが先決だ。


再び緑色の光を追い、翔太は新宿の中心へと駆け抜けていった。そして、ついに視界の先にそれが現れた。光が集中している場所――そこには、黒いスーツに身を包んだ一人の女性が立っていた。長い黒髪が風に揺れ、彼女の周囲には人々が無言で立ち尽くしている。まるで彼女の存在そのものに圧倒されているかのように。


「お前が…嫉妬の悪魔か?おい以前と会った姿と別の姿じゃないか」翔太は警戒しながら、その女性に問いかけた。


女性はゆっくりと顔を上げ、冷たい笑みを浮かべた。「ようやく気づいたのね、私がここにいることに。だが、遅すぎたわ。あなたたちはこの街を救えない。」


その声は人間のものではなかった。冷たく響くその声に、翔太の背筋は凍りついた。だが、怯んでいる時間はない。彼はフローリアたちにこの情報を知らせようと、すぐにスマートフォンを取り出した。


「これ以上お前の好きにはさせない!」翔太はそう言い放ち、女性に向かって一歩踏み出した。


しかし、その瞬間、女性の背後から新たな存在が現れた。黒い影のような姿――それは五十嵐の姿だった。翔太はその存在感に圧倒され、一瞬、言葉を失った。嫉妬の悪魔と五十嵐が手を組んでいるという最悪の事態が、彼の目の前に展開されていた。


「さあ、どうする?」五十嵐が不敵な笑みを浮かべた。「お前一人でこの状況をどう覆すつもりだ?」


翔太は絶望感に襲われたが、それでも拳を強く握り締めた。負けるわけにはいかない。仲間たちがいる。フローリアも悟志も、きっとこの場に駆けつけてくれる。


「俺は…!」翔太は気合を入れ直し、二人の悪魔に立ち向かう決意を新たにした。その瞬間、彼の背後から誰かが駆け寄ってくる音がした。


「翔太!!」それは悟志の声だった。

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