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弱小言霊(ヴェルブム)の覚醒–言葉を紡ぐ者–  作者: メロンクリームソーダ姫
第二章 邂逅編
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第10話 特級悪魔

五十嵐の絶対零度(ゼーロ アブソルートゥス)によって、文子の体は完全に凍りついた。永久凍土に封じ込められ、もはや彼女が動き出すことはない。氷に覆われたその姿は、冷たく美しくもあり、どこか哀れでもあった。


「終わったのか……」悟志は息を吐きながら、周囲を見回した。崩壊しかけていた次元も、徐々に安定を取り戻していくように見えた。しかし、五十嵐の表情は険しいままだった。


「文子は、下級の悪魔にすぎない」と五十嵐は静かに語り始めた。「奴は確かに手強かったが、まだ序の口だ。これから本物の悪魔たちが動き出す。文子を凍らせたのは、その連中をおびき寄せるためだ。」


「本物の悪魔……?」悟志は驚きと不安が入り混じった表情を浮かべた。「あれほど強かった文子が、下級の悪魔だというのか? 一体どれほどの強さなんだ、上級や特級の悪魔ってのは……」


五十嵐は頷きながら続けた。「悪魔には四つのランクがある。下級、中級、上級、そして特級。特級に至っては、人間の理解を超える存在だ。七人しかいないが、その力は特別の悪魔に匹敵する。文子のような下級の悪魔でさえ、これほどの戦いを強いられた。だが、これからが本番だ。」


その言葉を聞いた悟志は、言葉を失った。今までの戦いが序章に過ぎないことに気づき、恐怖が胸に押し寄せる。


その時、五十嵐が突然顔を上げ、険しい目つきで路地の奥を見つめた。「来たか……」


「え? 何が……?」悟志が周囲を見回すが、何も感じ取れない。だが、五十嵐は確かに何かを察知しているようだった。


そして、その視線の先に、ゆっくりと現れたのは黒いスーツを着た男だった。肩には一羽の烏が止まっており、闇を引き連れているかのような雰囲気を纏っている。悟志はその男を見た瞬間、体が冷え切ったような感覚に襲われた。


「こんばんは!」黒いスーツの男は、にこやかに挨拶をした。その無邪気な言葉とは裏腹に、五十嵐は冷や汗を浮かべ、緊張感を隠せなかった。


「悟志、気をつけろ。あいつは特級クラスの悪魔だ」と五十嵐が低い声で警告した。


「特級……!」悟志の心臓が高鳴る。彼は何も感じ取れないが、五十嵐の異様な反応が、相手の危険性を物語っていた。


男はゆっくりと歩み寄りながら、軽い口調で言った。「いやあ、さすがに下級の悪魔とはいえ、文子を永久凍土にするとは、君もなかなかやるね。だが、それが君たちの限界か?」


五十嵐はその言葉に反応し、すぐに氷の力を纏い始めた。「こいつが本気を出せば、俺たちは即座に終わる……」と悟志に小声で伝える。だが、男は笑みを浮かべ続けていた。


「焦るな、まだ手を出すつもりはないよ」と男は肩をすくめた。「今日はただの挨拶だ。君たちがどれほどの力を持っているのか、確認したかっただけさ。」


その言葉に、五十嵐は眉をひそめた。「お前の目的は何だ……?」


男は答えることなく、代わりに肩の烏がカアと鳴き声をあげた。「まあ、いずれわかるさ。だけど、特級の我々が動き出した以上、君たちは逃げ場がないことだけは覚えておいてほしい。神々の戦いに悪魔が加わる時、世界の均衡は崩れる。どちらが勝つか、見物だろう?」


悟志は冷や汗をかきながら、その言葉を聞いていた。「神々の戦いに悪魔が……それが、奴らの目的なのか?」


「そう、我々悪魔は、神々の世界に干渉し、その力を手に入れるために存在している。そして、言霊の書を手にした君たちは、その戦いの鍵を握っていることになる。」男は微笑みを浮かべたまま、言葉を続けた。


「だが、君たちがその戦いに耐えられるかどうかは別問題だ。」


「その言霊の書を狙っているのか……」悟志は拳を握り締めた。


「もちろん。だからこそ、文子を使って君たちを試してみたんだ。彼女は弱かったが、それでも十分に楽しめたよ」と男は薄笑いを浮かべる。


五十嵐は一歩前に出て、冷たい視線を男に向けた。「俺たちは簡単に屈しない。たとえお前が特級の悪魔だとしても、負けるつもりはない。」


「ふふ、そう言ってもらえると助かるよ。戦いが面白くなるからね」と男は肩の烏を撫でながら、ゆっくりと背を向けた。「また会おう、五十嵐、悟志。次は本気で遊ぼうじゃないか。」


男の姿が闇に溶け込むように消えた後、悟志はようやく緊張の糸が切れたように息を吐いた。「特級クラス……こんな奴らがまだいるのか……」


五十嵐は黙ったまま空を見上げ、冷たい風が二人の間を吹き抜けていった。戦いはまだ、始まったばかりだ。

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