第1話 白き本
俺の名前は木更津 悟志。夏目高校の2年生だ。
悟志は、その日いつものようにふらりと地元の古書店を訪れていた。誰もいない静かな店内に漂う古い紙の匂い。特に目的もなく歩いていた彼の目に、ひときわ薄汚れた一冊の本が飛び込んできた。まるで何かに呼ばれたかのように、本に手を伸ばすと、紫色で金色の文字で『精神の書』と書かれているのが見えていた。手に取ると、ずしりと重く、奇妙な違和感を覚える。迷いながらも、不思議に思えた悟志はその本を購入することに決めた。
家に帰宅した悟志は、好奇心から思わずその本を開いた。しかし、次の瞬間、突如本が強烈な白い光を放ち、眩しさに思わず目を閉じた。光が消えると、本の中身はまっ白になり、文字も内容も全てが消えてしまった。「なんなんだ…これ?」悟志は戸惑いながらも、そのまま本を棚に置き、しばらくその出来事を忘れようとした。
数日後、、、、
突然家のチャイムが鳴った。ドアを開けると、そこには見知らぬ少女が立っていた。長い黒髪、透き通るような肌、そしてまるで全てを見透かすような鋭い目。灰色のワンピースを着ていた彼女は一言、静かに悟志に言った。
「その本、手に入れたのね。」
悟志は驚き、彼女が何者なのかも分からないまま、彼女の言葉に引き込まれた。少女は家に上がると、まるでそれが当然のことかのように『精神の書』の正体を語り始めた。
「『精神の書』は、ただの本じゃないわ。この本を開いた者には、その本が持つ力、精神の力が宿る。そして、それを手に入れたあなたは、もう後戻りできない。2000年ぶりに、この世界に戦いが訪れる。」
その言葉に悟志は息を呑んだ。「2000年ぶりの戦い…? どういうことだ?」
少女はさらに続けた。「この本は、過去の世界でも最も強大な力を秘めた者たちによって継承されてきた。そして、その力を持つ者は、必然的にこの世界の未来を賭けた戦いに巻き込まれる。あなたがその本を開いた瞬間、選ばれたのよ。」
悟志の胸に恐怖と興奮が同時に湧き上がる。平凡だった彼の日常は、この本を手にした瞬間から完全に崩れ去り、彼は強大な力を巡る壮絶な戦いに巻き込まれる運命にあった。そして、その戦いは2000年ぶりに再び動き始めた。彼の中で目覚め始める「精神の力」が、これからどんな運命を引き寄せるのか――悟志はまだ知る由もなかった。
「君には時間がないわ。戦いはもう始まっている。覚悟を決めなさい、悟志君。」
彼の平凡だった日々は、確実に終わりを迎えようとしていた。戦うか、逃げるか。その選択肢すら、悟志にはもう与えられていないのかもしれない。絶望の戦いが始まろうとしていた。




