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第55話 作戦会議

 愛理はアデルが語る、とても長く苦しい途方もない話を聞いていた。


「アデル様は私の過去世ということですか……?」

「そう。あなたはわたくしの来世。それだけで、あなたを巻き込んでしまった。ごめんなさい」


 アデルは頭を下げた。


「いずれ私の世界も魔王に滅ぼされる……」


 愛理は聞いた話の整理が追いつかない。

 アデルは言う。


「わたくしは魔王に取り憑かれて分かったことが二つある。一つ目は世界はいくつもあるということ。二つ目は、魔王は世界を行き来することができること。つまり、魔王は同一である可能性が高い。ルイスフィールドを滅亡させたあと、女神ララーシャに封印されなかった魔王が愛理の世界を滅ぼすのだとしたら……」

「ここで女神ララーシャに魔王が封印されれば、わたしの世界も助かるかもしれない、と言うことですね」


 アデルは頷き、立ち上がった。


「そろそろみんなを呼びましょうか」


 愛理は頷いた。

 イアンたちはずっと部屋の外で待っていたようで、アデルがドアを開けるとすぐに戻ってきた。

 イアンは愛理に尋ねる。


「話は終わったのか?」


 愛理は頷いた。

 アデルはじっとイアンを見つめる。

 イアンはアデルからの視線にたじろいだ。


「アデル嬢、なんでしょうか?」

「マークによく似ていると思って。彼は死んだのね……」

「そういえば、父はあなたの護衛騎士でしたね。アイリーンから聞いたのですか?」

「ええ。そんなところ」


 マーガレットが言う。


「夕食を取りながら、これからのことを話しましょう」


 愛理たちは頷いた。



 愛理たちはダイニングに移動して、夕食を食べはじめた。

 マーガレットは言う。


「魔王が復活した以上、我々は手を打たねばなりません。それは教会だけでなく、騎士団、ケヴィン殿下が関わっていることから王家にも伝えなければなりません」


 クレイグは頷く。


「騎士団長にも魔王の存在は伝えています。騎士団には、明日俺が事態の説明に行きます」


 マーガレットは頷いた。


「騎士団の方はクレイグ様にお願いしましょう。わたくしは明日、王城に出向き、陛下に事態の説明をいたします。アイリーン、一緒に来てくれますか?」


 愛理は頷く。


「分かりました」


 イアンが軽く手を上げて言う。


「なら、俺も一緒に王城に出向きます」


 マーガレットはイアンを見て頷いた。


「あなたはアイリーンの護衛騎士であり、後継人です。それがいいでしょう。それから、これからのことです。アイリーンたちはどう動くおつもりですか?」


 愛理は答える。


「魔王を探そうと思います。完全復活する前に抑えないと……」


 シルフは愛理の横でスープを飲むのをやめて言った。


「魔王を探すよりも、女神ララーシャを探した方がいい。女神ララーシャが目覚める前に魔王の手に落ちればそれまでだ」


 愛理はシルフに尋ねる。


「女神ララーシャは眠りについていると言っていましたが、どこにいらっしゃるのでしょうか?」


 シルフは少し考えた後、答えた。


「女神ララーシャは恐らく西部にいると思われる。西部にいた時に女神ララーシャの気配を感じたような気がする」


 シルフの回答に愛理は苦笑した。


「また曖昧ですね」

「仕方がないであろう。目覚める前の女神ララーシャは気配が薄いのだ。だが、そのお陰で魔王もすぐには女神ララーシャを見つけられないはずだ」

「女神ララーシャはどのようなお姿なのですか?」

「それも分からん。女神ララーシャは誰かを依り代にしていると思われる」


 愛理は頭痛のする頭に手を添えた。


「つまり、西部にいるかもしれない誰かが女神ララーシャの依り代で、女神ララーシャは未だ眠った状態だということですね。しかも気配が薄くて、シルフ様でも辿れないと」


 ローナは両手を軽く上げた。


「お手上げじゃない。西部に何人の人がいると思っているの」


 ラウラが言う。


「魔王を探した方が早いのでは? シルフ様は魔王の気配は分かるのですか?」


 シルフは腕を組む。


「わたしも探ってはいるのだが、今魔王は気配を消しているようで、どこにいるのかさっぱりだ。やつは気配を消すのがうまい。シルフの隠里でも、地下室でも、すぐそばまでこなければ分からなかった」


 それを聞いた愛理たちは溜息を吐いた。

 愛理は言う。


「シルフ様に分からないのだとしたら、こちらもお手上げですね。だったら、ある程度位置が絞られている女神ララーシャを探した方がいいですね」


 話がひと段落着いて、マーガレットが言う。


「もう暗くなりましたし、みなさん、今日は我が家にお泊りください」


 愛理たちはお礼を言った。



 ダイニングから出ると、ジュリアスが壁に背を当てて立っていた。

 愛理たちが出てくるのを待っていたようだ。

 その中にアデルの姿を見つけて、ジュリアスは驚いたようだ。


「叔母様、お目覚めになったのですか?」


 ジュリアスの言葉にアデルは苦笑する。


「そうよね。わたくしはジュリアスの叔母なのよね。実感が湧かないわ。ジュリアス、わたくしのことはアデルと呼んでくれない?」

「アデル様がいいのであればそうします。イアン様がいらしていると聞いて、お会いしたくて待っていたのですが、ご迷惑でしたか?」


 イアンは笑みを浮かべる。


「いいや。久しぶりだな、ジュリアス」

「キーリーポート以来ですから、七日ぶりですよ。そんなに経ってないです」


 ジュリアスはおかしそうに笑った。

 キーリーポートを出てから、まだそれだけしか経っていないことに愛理は驚いた。

 いろんなことがありすぎて随分前のことのように感じる。


 ジュリアスと少し話した後、愛理たちは客室に移動した。

 先ほどの客室ではなく、一部屋にベッドが四つある部屋だった。

 女性と男性で部屋は別れたので、今は愛理、ローナ、ラウラ、シルフだけだ。

 愛理たちは寝間着に着替えて、火を消してからベッドに横になった。

 ローナがベッドに寝そべりながら言う。


「アイリーンは魔力切れを起こしているんだから早く寝なよ。明日は王城に行くんだろ?」


 愛理はベッドに腰かけて、困ったように言う。


「そうなんですが、目が冴えてしまって……」


 ラウラは綺麗な銀髪を梳かしながら言う。


「横になれば眠れる」


 ラウラの言った通り、愛理は横になって数秒で寝息を立てていた。

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