紫になりたかった
「深紫」と「浅紫」は我慢しました。
赤紫より 青紫より
いちばん紫になりたかった
黒紫より 白紫より
いちばん紫になりたかった
濃紫より 薄紫より
いちばん紫になりたかった
綺羅紫より 襤褸紫より
いちばん紫になりたかった
更けてしまうまえの
星もまだ輝いていない夜空みたいな
あんな紫におれはなりたかったんだけど
なれるもんかって 嗤うやつらのことばにも
かみつくことなく うなずいちまってる
こんなおれは ちっとも紫じゃねえやって思ったら
悔しいやら 情けないやらで
涙が出てきそうなもんなのに
いまじゃ それすらないのはどういうわけだ?
重紫より 軽紫より
いちばん紫になりたかった
太紫より 細紫より
いちばん紫になりたかった
棘紫より 薔薇紫より
いちばん紫になりたかった
虹紫より 蛇紫より
いちばん紫になりたかった
ほんとになりたかったんだぜ
なのに、「虹」と「蛇」はなぜ我慢できなかった?