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光男の孔明服

ラボの外に行くと先程モリセイさんと乗って来た飛行装置とは別に、カンナさんが乗って来た飛行装置が置いてあった。


「お父さん。私達は大王宮に向かいます」


「光男君を頼んだぞカンナ。そして姫の弱点を必ず見つけてくれ。頼むぞ光男君」


軽く頷く俺。ペンキャップ型飛行装置にカンナさんと乗り込む。


観覧車に座るような感じで、狭い座席に向かい合って座る。


至近距離でカンナさんのビキニアーマーを見た俺は、着ているガウンにテントが張らないように一物を腿に挟んでいた。


カンナさんが、横にあるタブレットみたいのを持って画面を触ると、俺達が乗っている飛行装置が僅かなローター音で、空へ高く舞い上がって行った。


手を振るモリセイが直ぐに小さくなる。


カンナさんはガウンにサンダル姿の俺を見ると


「宮殿に行く前に、町で洋服を見ていきましょう」と言った。


俺は町という言葉を聞き、急に人込みを意識し始め不安になって来る。


緊張でだんだんと心拍数が上がってくる。


「嫌だなー怖いなー」と俺が呟いていると飛行装置は森を抜け、街並みが見えて来る。


そこは、俺が住んでいた場所とは全然違う風景が広がっていた。赤い瓦屋根に石造りの壁。写真とかでみるヨーロッパのような風景だった。


人もそんなに歩いていないし、もしかしたら大丈夫かもしれないと俺は少しホッとしていた。


「じゃあ私の知っている洋服屋に行きましょうか」


カンナさんは洋服屋の裏の空き地に乗り物を着陸させた。


空き地に降りると、土管の中に居る猫と眼が合った。


猫はすぐ逃げる。


俺はカンナさんの後をついていき、洋服店の中に入った。


店内はなかなかの広さで、たくさんの洋服が陳列されていた。


もちろん俺は洋服の事なんかさっぱりわからない。


グレーのスウェット上下を指さして「あ、カンナさん。俺はこれでいいですから」


カンナさんは俺を横目で見て「それは室内着ですよね。ちゃんとした服を着ていかないとゴルダバ大王様に認めてもらえませんよ?」


「むしろその方が俺には好都合なんですけどね」


「光男さんとの結婚を大王様が認めてくださらなかった時、姫様は光男さんと駆け落ちすると言ってましたよ」


「うっ」と息を吞む俺。一体何でそこまで俺に執着するんだよあのゴキブリ女は?嫌がらせにもほどがあるぞ。


「光男さんこれなんかどうですか?」


黒くて、てっかてか光ってる革パンツを持ってきた。


「そんなの俺から一番遠い服ですよ」


カンナさんが俺の足に、てかてかパンツを合わせると、パンツの半分ぐらい裾上げしなくてはならない感じだった。


「じゃあ上着はどうですか?」


襟がものすごい高い、変な形の上着を持ってきた。


「俺はもっと普通の服でいいんですよ」


ド〇クエのラスボスでもあるまいし、なんで俺がこんなの着ると思うんだよ?もしかしてカンナさんは俺で遊んでるのか?


カンナさんは今度は孔明が着てる服みたいのと孔雀の扇子を持ってきた。


これはいよいよ俺で遊んでいるなこの女。


だんだん俺は腹が立ってくる。


「光男さんはウンガブンガ国の軍師なんですから、これくらいの服を着ないといけませんね」


俺は普通に聞き流しそうになったが


「ちょ、ちょっと待って下さいカンナさん?軍師とは一体なんですか?」


「姫様が光男さんを天才軍師という設定で大王様に紹介して欲しいと仰ったので、私はそのようにしました」


なんであいつはいつも余計な事ばっかりするんだよ。くそ、くっそ。あいつのせいで、俺の優雅なニート生活が。ゴキブリ女、何の嫌がらせなんだよこれは本当に、くそがああああ。


ふと、カンナさんを見ると、俺の意見などどうでもいいらしく、孔明服、扇子とスウェット上下、俺の下着を適当に見繕って購入していた。


俺はまた家に帰ると言って、カンナさんを困らせてやろうかと思ったが、もう流石にここには俺が帰る場所は無いだろうとついに諦めた。


俺は試着室で下着と孔明服を着て、腰を紐で縛り、扇子を持たせられた。


買う前に試着するもんだがな普通は。俺に有無を言わせないためにカンナさんは先に買ったんだろうな、くそ。


両手いっぱいの紙袋をカンナさんは乗り物に入れて、遅い昼食を食べに、二人で現地の大衆食堂へ行った。


店はまあまあ混んでいたので、俺は少し緊張していた。


しかし、こんなエロいビキニアーマーのお姉さんが居るというのに、なんで周りの客は何の反応もないんだ?俺は全然納得いかなかった。


でも、これが文化の違いというやつなんだろうか?


俺は凄い喉が渇いていたので、甘ったるい炭酸飲料をカンナさんに何度も注文してもらい、がぶ飲みしていた。


カンナさんがスパゲッティ的な料理を頼んだので俺も同じものを注文し、まあまあかなと思って食べた。


腹の膨れた俺達は、ついにあのゴキブリ人間顔女の一族がいる大王宮に向かう事になった。

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