報告会と光男の逃亡
ウンガブンガ国の大王宮では、姫が婿探しの旅から帰ってきたので報告会が行われていた。
大王の間にて
「それで姫に求婚している人間はいつになったら大王宮に連れてくるのだ?私の可愛いジーラ姫よ」
ジーラ姫の二倍の大きさであるゴルダバ大王が言った。
「お父様。光男様は恥ずかしがり屋さんなのです。元の世界にまだ未練があるとおっしゃるので少し猶予を与えました」
「しょうがない人間だな。ジーラ姫に恥をかかせるつもりか?婿となるのに相応しい優秀な人間だと聞き及んでいるが、どうなんだカンナよ?」
「はいとても優秀な御仁です。戦闘シミュレーションを得意としていて、いつも高い得点を上げています。実戦タイプの姫と頭脳の光男様で理想的なカップルだと思います。きっと彼の天才的な頭脳でウンガブンガも安泰でしょう」
「よろしい。そこまでとはな。姫も男を見る目を養ってきたようだな。私もその男に会ってみたくなったぞ」
大王は愉快そうに地面を揺らしながらその部屋を出て行った。
にこやかな顔をしている普通サイズの人間のマルガレーテ王妃も、大王に続いて椅子を立ち部屋を出て行く。
報告会は終わり
「カンナちゃんよくやったわ。後は彼をここへ連れてきて私にプロポーズさせるだけね」
「姫様あんな嘘を言って大丈夫なんでしょうか?」
「嘘から出た実にすればいいのよ。光男様はようやく体が再構成されたとラボから報告を受けたわ。カンナちゃん迎えに行ってくれない?」
「えー。また私ですか姫?」
ジーラ姫の顔が急にひきつる
「おい。お前が色つかって光男様に近づいだの忘れてねーからな。それとも私の直属部隊に入ってみる?宇宙で何分息を止めてられるのカンナ?」
「息止めただけでは、宇宙で生きていられないと思うんですけど?」
「あんた。私の体が変だって言いたいの?」
姫のこめかみに青筋が
「あー、すみません姫。私、光男さんを迎えに行ってきます」
その場から逃げるカンナ。
「今日中に光男様を連れて来てね。頼むわよカンナちゃん」
手を振る姫。
「なんで私ぱっかり?ビキニアーマー隊は他にもたくさんいるのに」
半泣きで走るカンナ。
◇ ◇ ◇ ◇
一方その頃光男は
謎のラボから逃げ出し、緩やかな坂の小道を道なりに下りていた。
最初は周りが開けた場所だったが、進むにつれて木々が多くなり日差しのあまり当たらない森の中になってゆく。
俺はだんだん不安になってくる。人里までどのくらいの距離なのか、よく聞いてから建物を出れば良かった。しかし進むしかない。こんな所で死んでたまるか。
家に帰ったらもう2度と外には出ないぞ。いや、でも俺は今回だって別に自分で家を出たわけではない。
ひたすら小道を歩く。
足の裏が痛い。なんでサンダルとか履いて出てこなかったんだ俺は?
あいつが奴隷とか不穏な事を言うから俺はパニくって出てきてしまったんだ。
俺を引き留めてくれていれば、こんな事になってはいなかったのに。
だんだんと、あの中年男に腹が立ってくる。
なんで車で俺の家まで送るとか気が利いたことが言えないんだあいつは?
素足で森の小道を歩く痛みを我慢しながら、しばらく歩いていくと
「あれ?」
ふと前を見ると少し開けた草地になっている。
「やっと森を抜けたのか?」
だが開けてるのはそこの空間だけで、また小道が鬱蒼とした森に続いている。
どこまで歩けば森を抜けるんだ?もう疲れたし足が限界だ。
草地に倒れ込む。
せめて靴がないと。喉も渇いたな。フェンタグレープが飲みたい。
すると空からローター音が微かに聞こえてくる。
俺は音がする方を見てみると、ペンキャップのような形をした乗り物が空からフラフラ降りてくる。
一体どんな原理で動いてるんだこれ?プロペラでも、ジェットエンジンでもなさそうだが?
乗り物が着地すると前の扉が開き、さっきの中年男がでてくる。
「駄目じゃないかキミ。そんな恰好で出て行ったら。町まではあと二十キロくらいあるぞ。森の中じゃ降りられないから平地で君を見つけられてよかったよ」
「あ、す、すいません」
俺の足を持ち上げて足裏を見る中年男。
「足の裏が傷だらけだ。ラボに帰って治療しよう」
「あ、はい」
中年男は思っていたよりいい人だったので、俺は少し涙ぐんでしまう。
おとなしく指示に従って変な乗り物に乗ってラボに戻る。
中年男が何かの機械を俺の足の裏にあて、照射すると直ぐに傷が治ってしまった。
この世界は医療技術も進んでいるようだ。