奴隷ダンジョンとランツの別荘
俺は気が付くとひんやりとしたコンクリの壁に囲まれた部屋に寝ていた。起き上がると俺はスウェットの上下を着ている。周りを見回すと床にはくたくたになった布団が幾つか敷いてある。
ここはおそらく大王宮では無いな。空気感が違う。
俺は部屋に一つだけあるドアのノブに手を掛けた。
ガチャガチャ。
あれ?鍵がかかっている。鍵穴が見当たらない。外から鍵を掛けるタイプなんだろうか?
しょうがないので俺は布団に座る。ここは汗臭いしカビ臭い。生活臭が凄いな。
俺は殺されなかったようだが、どこかに拉致されたようだ。
それにしてもツカサさんの口撃は凄かったな。あれを耐えられる男はいるのだろうか?
思い出して、俺はまた股間にテントが張っていた。
するとドアが急に開いて、若い男が部屋に入ってくる。
一見して俺の様な冴えない駄目そうな奴だった。
「光男くんでいいんだよね?僕はタチオ。君はランツ様の奴隷になったんだ。僕らと一緒に生活するんだよ」
「ランツの奴隷?」
「光男くんに直接話すとランツ様が仰っているので、僕について来てくれるかな?」
タチオについて行くと、ランツは高級そうな家具が置いてある高級そうな部屋の高級そうな椅子に座って待っていた。
「やあ光男。ようこそ奴隷ダンジョンへ」
「奴隷ダンジョン?」
「そうだった。お前普通に喋れるんだったな。嘘つきチ〇カス野郎が。早くそこに座れよ光男」
俺は大理石の床に腰を下ろす。
「誰が普通に座っていいと言った?正座だよ。正座」
この硬い大理石の床に正座しなければならないのか?だが全然状況がわからないので今は素直にランツに従っておこう。
俺が正座すると、ランツはスキーゴーグルのようなものを装着し、笑った。
「やっぱり思った通りだ。ゴミ野郎。レベルは2か」
レベルだと?レベルが見える装置なのか?なんかそれっぽくなってきたぞ。
俺がドキドキしているとランツは
「ここにいる奴隷たちはレベル1か2だ。ちなみに俺はレベル10だ。お前達が束になっても絶対に俺に勝てない。だが光男よ。武器があれば俺に勝てるとお前は思うよな?でも先に言っておくが、俺は絶対に武器になるような物はお前に触らせない。絶対にだ」
ランツは整形し過ぎて変わらなくなった表情で笑った。
俺はランツの小物っぷりにだんだんと緊張が解けていった。
「ランツ様。ここはダンジョンの中なのですか?」
「ああそうだ。正確には奴隷ダンジョンに俺の別荘を繋げているだけだけどな」
「奴隷ダンジョンとはなんですか?」
「ゴルダバ大王は刑務所に金を使いたくないのだ。刑が確定した犯罪者達は全てこのダンジョンに放り込まれる。囚人達は中のモンスターと戦い部屋を奪い合う。囚人が負ければモンスターにケツを掘られて女になる」
「ケツを掘られて女になるとはどういうことですか?」
「モンスターの性奴隷になるのだ。囚人はケツを差し出す代わりにモンスターの部屋で養ってもらえる」
俺の知ってるダンジョンとは随分違うんだなと俺は思った。
「地上からすぐのレベルの低い階層は囚人が部屋のほとんどを占拠している。地下に行くに従ってモンスターの女になる囚人は増えていく。モンスターが強くなっていくのだからそれは当然だよな」
「今、我々がいるランツ様の別荘は階層どれぐらいなんですか?」
「ここは地下200階くらいだろうか。レベル2000のモンスターが徘徊している」
「ええ?レベル2000?」
ランツはその顔を待っていたという感じで話し出した。
「そこの廊下とダンジョンの通路が鉄格子を挟んで繋がっている。だから気を付けろよ光男。近づいたらモンスターにケツを破壊されるからな」
ランツが下品な笑いをする。
「よし、後はそこのタチオに細かい事を聞け。もう行っていいぞ光男」
俺は立ち上がろうとするが、大理石に正座し続けていたので痺れた足がもつれて転んだ。
「あっ痛て」
俺は四つん這いになり、なかなか立ち上がれない。
「大丈夫ですか光男くん?」と言ったタチオの顔を見上げたときそれは起こった。
俺の目の前にステータス画面が出た。
「ああっ。これは」
タチオ レベル1
我慢強いだけが取り柄の男
備考
備考の下の情報を見ようとすると画面は直ぐに消えてしまった。
なんで急にステータス画面が出たんだ?そしてなんで直ぐに消えた?
「何をしている?早くここから消えろよ光男」
俺はタチオの後ろを歩き、部屋を出た。
少し歩くと廊下が十字路になっている。左5メートルぐらい先に鉄格子がある。奥はダンジョンになっているようだ。
歩いているウェアウルフと偶然眼が合う。すると鉄格子の前に来てウェアウルフは俺をじっと見ている。
でっかいし、もふもふだな。初めてモンスターを見た。
「タチオくん?あの鉄格子は壊れたりしないの?」
「あれは特別製らしくて、レベル2000のモンスターが攻撃しても壊れないようです」
「それを聞いて安心した」
俺達は寝室に行く。
「それで俺はここで何をしたらいいんだろうか?」
「掃除とか洗濯とか雑用とかですね。あとはランツ様のご機嫌をとってランツを稼ぐんです」
「ランツを稼ぐ?」
「ここで使用できる通貨です」
「通貨の価値が全然分からないし、それは何に使うの?」
「即席麺を買うのに5ランツ、お湯を沸かすのに2ランツ。トイレを利用するのに1ランツ、流すのに1ランツ、ランツ様のスマイルを見るのに1ランツとかそんな感じです」
俺は聞いてるだけで頭がおかしくなりそうだった。
「タチオくんはここを逃げ出そうとは思わないの?」
「出口の場所はランツ様しか知らないんです。その場所が分かったとしても扉は三重になっていてそれぞれに6桁の番号を入れないと開かないと言ってました」
なんて用意周到な異常者だ。ここでランツと暮らすのと、モンスターにケツを差し出して面倒見てもらうのと、どっちがいいのかわからなくなってくるな。
あの鉄格子を開けてモンスターにランツを襲わせるとかは出来ないものだろうか?
「タチオくん?あの廊下の鉄格子はどうやって開けるの?」
「あの鉄格子はランツ様の部屋に開閉ボタンがあって電気で開くようです。僕は偶然ランツ様が話している電話の内容を聞いてしまったのですが、ここの奴隷遊びに飽きたら鉄格子の扉を開いてモンスターに僕たちを襲わせ自分だけ逃げるつもりだと言ってました」
「なんて奴だ。しかし俺は来たばかりだ。この別荘をもう少し調べて脱出方法を探らねば」
それにしても
「今何時ぐらいなのかわかるタチオくん?ここは地下深くだから外の明るさが全然わからないし、壁に時計も掛かってない」
「ちょっと待っててくださいね」
部屋を出て少ししてタチオが戻って来た。
夜の9時過ぎだそうです。
「ここには時計が無いの?」
時計は禁止されてます。ランツ様に聞きに行かなければならないんです。
ランツ時報は1ランツです。
俺は深いため息をついた。
「やる事もないし、夜の9時なら電気を消して寝ようか」
俺は布団に入り寝ようとしたが、先程目覚めたばかりだったので、なかなか眠れずにいた。するとタチオくんが寝ている布団から「くくっくっくっ」と声がした。
なんだろう。辛くて泣いているんだろうか?俺は電気を付けて「タチオくん大丈夫?」
タチオの顔を見ると、タチオは笑っていた。
「光男くん。これを見て下さい」
俺に写真を見せる。これはゴキブリ人間顔の男だ。
「これはランツ様の整形前の顔なんですよ。寝る前に僕はこの写真を見て、この化け物よりはましだと安心しているんです」
「ああ。そうなんだ」
タチオの闇も深いようだ。
また電気を消す。しかし、こんな地下二百階まで電気が通っているんだな。子供達はろうそくの炎で勉強しているとか大王が言ってたが。
それにしてもウンガブンガの王族はなんであんなに醜い異常者ばかりなのだろうか?マルガレーテ王妃だけがまともな人間だ。謎が多いな。




