嫌がらせパーティ
俺のお披露目パーティ当日になり、俺は極度に緊張していた。
何も話さなくてもいいとはいえ、俺目当てにパーティに来る人もいるらしいので、どんな顔をして挨拶すればいいのか、もういろいろ考えすぎてパニックだった。
今日は孔明服ではなくて背広を着せてもらっていた。ついに貞操帯も外された。俺の震える手をカンナさんか強く握り締めてくれた。
とりあえず会場に入ったら眼があった人に会釈してくださいとカンナさんに言われたが俺の首は緊張でがちがちになっていた。
初めての登校する小学生のようにカンナママに手を引かれ、俺は会場の中に入る。
一斉にこちらを見る大勢の人、人、人。
「うぐっ」と俺は息が詰まり、直ぐに下を向いた。カンナさんは俺の手を引き小走りになり、ある透明なスペースに入った。
「ここは喫煙室だった所です。光男さんは異世界から来たので、この部屋の特殊な酸素濃度でないと溶けてしまうという設定にしておきました。この部屋から出られないと皆さんに言ってありますから大丈夫です。料理の皿は後で持ってきます」
カンナさんは何からなにまで俺の事を考えてくれている。カンナさんを見て俺の目頭が熱くなった。
「それとゴルダバ大王が光男さんに乾杯の音頭を取ってくれと言ってます」
「ええっ?喋れないのにどうやって?」
「光男さんはそこのテーブルのシャンパンが入ったグラスを上にあげるだけでいいそうです。それくらいはさせないと罰にならないと言ってました」
まだ罰にこだわっているのかあいつは。なにが大王だ。しょーもない奴だな。図体でかいだけでほんとにしょーもない。
俺は少し落ち着きを取り戻し、ふと会場を見ると、マネキンのような白い顔をした得体の知れない奴がじっとこちらを見ているのに気付く。
「カンナさん。あの白い顔をした人は誰なんですか?」
「あれはジーラ姫のいとこのランツ様です」
「いとこなのか。でも顔の系統が似てないですねジーラ姫と」
「いえ。最初は似ていたのですが、整形手術をし過ぎてあのような顔になってしまわれたのです」
すると白いマネキンのような顔をした男はこっちに早歩きでやって来た。表情がいまいちわからないが怒っているのだろうか?
透明なドアを開けて中に入って来る。
「おい貴様。カンナさんといつまで一緒にいるんだ。お前はジーラ姫の婚約者だろうが」
「ランツ様。パーティーの段取りなどを光男さんに話していたところです」
「そうですか。失礼しました。それでは今から会場で僕とお話ししましょうカンナさん」
カンナさんの手を引いてランツという白い顔の男は喫煙室から会場に出て行ってしまった。
俺はポカーンとしていたが、ああそうか。あいつはカンナさんに惚れているんだなと思った。
しかしジーラ姫は3メートル級なのにランツは普通の人間サイズだったな。不思議な一族だ。
不思議と言えばゴルダバ大王とマルガレーテはどうやって性交したんだろうか?
どうして二人に全く似ていないジーラ姫が生まれて来たんだ?
ホントに不思議な一族だな。
俺が思いにふけっていると「それでは婿殿に乾杯の音頭を取って貰おうか」とゴルダバ大王の声が聞こえた。
俺の心臓がキュッとなる。
「何だ急に?心の準備が出来て無いぞ。だいたいなんで俺がそんな事をしなければならないんだ?」
とりあえずグラスを手に持ち、上にあげればいいとカンナさんは言っていた。
俺はグラスを持った。会場を見ると俺に皆の視線が集まっている。俺はぶるぶる震え出す。
お、落ち着け。俺は喋れない事になっている。ゴルダバ大王がなんとかしてくれるのだろう。
長く間を取ってからゴルダバ大王が「ああそうだ。婿殿は何故か話せないらしいな。では私が音頭を取りましょう」
「本日はお集まりいただきありがとうございます。チ〇カスとジーラ姫に乾杯」
くそ。俺を困らせたいだけだろゴルダバ大王。
腹抱えて笑っている奴がいるな。あれはさっきのランツ。この一族はとことん俺に仇なす存在らしい。
そして会場は歓談で騒がしくなり、俺がする事はもう無いとほっとしていると扉が開いてカンナさんが入って来た。
「光男さんお疲れ様です。料理を持って来ました」
プレートに載せていた皿をテーブルに置いていく。
「すいません。カンナさんいろいろとしてもらって」
「光男さん。これからが本番です。姫の弱点を見つけて下さいね。お願いします」
ああ、そうだったな。カンナさんも目的があって俺を利用しているんだよな。そんなもんだ。
すると扉が開いて、ランツが入って来た。
「カンナさん。また、こんなチ〇カス臭い所に来て。こんなチ〇カス野郎なんかより俺と楽しくやりましょうよ」
カンナさんの手を引いて会場に連れて行った。
「くそ。いちいち何だあいつは」
俺はやけ気味にテーブルの料理に次々手を付ける。夢中になって食べていた。
「結構美味いなこの料理」
腹も膨れたし、早くパーティが終わらないかなと会場を見ると、ゴルダバ大王とランツが俺の方を見て何かを話しているのが目に留まる。
あれは絶対に俺にとって良くない事を話しているな。今後の展開が不安になる。
パーティーが終わり、俺は安堵と不安な気持ちで自分の部屋に戻った。
すると部屋に小さな収納棚とその上に黒電話が置いてあった。
「あっ。黒電話」
俺は興奮して思わず声が出た。
棚の中に紙切れがある。それを手に取ると7桁の番号が書かれている。
パーティの嫌な出来事が一瞬で吹っ飛びドキドキわくわくしてくる。
もう貞操帯は無い。俺の力がみなぎってくるのを感じる。やはり俺の本体はこの股間の一物らしい。
紙の番号を見る。この番号に掛けたら、パープルビキニアーマー隊のサービスか暗殺、どちらかが待っている。
俺は生唾を飲む。
ゴルダバ大王は俺を殺す気かもしれない。
いや。だが、もうどうでもいいんだ。
どうせ俺の人生はこの先も碌なことがないんだ。外れたら死ぬだけだ。
数字を見ながらダイヤルを直ぐに回した。ジーコ、ジーコ。
プルルル、プルルル、プルルル。
俺の心臓の鼓動が早くなる。落ち着け俺。
ガチャ
「はい。どなたですか?」
「あっ。ああっ。ええと、サービスを受けたいんですが」
「サービス?」
「あ、はい。出張サービスをお願い致します」
「出張サービス?」
なんか鈍いオペレーターだな。
でもこの声はなんか聞き覚えがあるぞ。
「あれ?その声は光男さんですか?どうして私の番号がわかったんですか?」
やっぱりカンナさんだった。
「いや。部屋に戻ったら電話機と番号が書かれた紙があったので、つい掛けてしまいました」
「なんで光男さんの部屋に私の番号があるんですか?」
「それは俺にもわかりませんよ。ゴルダバ大王とかに聞いてくださいよ!」
ガチャン
なんかイラッとした俺はすぐに切ってしまった。
そして棚をもう一度よく見るが、もう紙は無いようだ。
「はあーー」とため息を付き、ベッドに仰向けに寝る。
俺をからかうのはゴルダバ大王しかいないだろ。新しい敵のランツかもしれないし。
ちくしょう。ばかにしやがって。
そのまま俺はふて寝した。




