くそニート光男
俺は大蒜光男。
なんとなく絶倫の香りがする名前だが、性欲は普通の人よりはあるとは思う。
陰キャで、友達もいない俺は友達の代わりのようなビデオゲームを夜遅くまでやり、大好きなフェンタグレープ味を飲む量も日に日に増えていった。
中学2年の時に体育の授業でお腹が痛くなり、体育館を出て学校二階のトイレに向かう途中で我慢できずうんこを漏らしてしまった。
そのまま家に帰り、次の日から学校には通えなくなった。
学校の階段にこぼれ落ちた俺のうんこが俺の物だとクラスの連中にパレてるかどうかは未だ気になるところではある。
それから何年経っただろうか。最初は自分の将来について真剣に考えるフリをしていたが、それもどうでもよくなりゲームをやってクリアしたらまた違うタイトルに手を出してと毎日同じことを繰り返している。俺は人と繋がるのが嫌なので、MMO的なのはしない。ニッチなシングルプレイのゲームばかりを好んでする。
もう自分の年齢も気にならなくなってきて、今では俺が何歳なのか数える気にもならない。日本に何かやばい事が起きて、逃げなくてはならない状況があっても俺はゲームしたまま家で死にたいと思ってるのだ。
親に最新スペックのPCを買ってもらいぬるぬるサクサクで好きなゲームをやっている。働いてもいないのに何でそんな高いものが買えるのかというと俺の家は金持ちなのだ。そして俺はとても甘やかされている。
親が金を持ってるのも才能だと言ってる奴がいたが、俺は才能があり過ぎて働かなくても良いのだ。そう自分に言い聞かせて安心している最低ダメ人間なのである。
そういうわけで今日も当然俺はゲームをやっている。
尻ASSサムというタイトルのTPSだ。見渡しが良いマップに大量の敵モンスターが現れ敵HPを武器で削ってひたすらケツを掘る。そんなゲームだ。
ゲームパッドは使わない。左手にキーボード、右手にマウス。それが俺のスタイルだ。
よしロードが終わったのでプレイするとしようか。
両手に爆弾を抱えて叫びながらマッチョな敵が突っ込んでくる。
「あ゛あーーーーーーんん」
こいつ等は焦らず撃てばなんてことはない。何発か弾をヒットさせてHPが無くなったら俺の方にケツを向ける。
左クリック連打。敵キャラのケツを掘りまくる。
このサムの腰使いを見よ。
「あ゛あーーーーーーんん」
よし、ケツの穴から弾薬と回復アイテムが出て来た。
んん?敵の中に見たことのないキャラが交じっているな。
なんだこいつは?
顔は面長ゴキブリ人間顔。髪型は長髪おかっぱ。ごついおっさんの体型。獣の皮の服。
右手でブンブンこん棒を振り回しながら突っ込んでくる。
胸は出てるから女なのか?
ここは男の炭鉱だぞ。製作者は一体何を考えているんだ?
武器の射程距離に入った
パンパンパンパン。
意外と強いな。
強い武器のキャノンに切り替えてくたばれゴキブリ人間顔女。
ブシュ。ドオーーーン。
全然なんともない。
なんだこいつ。
ブシュ。ドォーーン。
「足速っ」
もうそこまで来て。
ボゴッボゴッ
サムの頭がこん棒でカチ割られた。
GAMEOVER。
どうなってるんだ?いつもやってるゲームなのに。何で変なキャラが?
キーを押しても再プレイにならない。画面が切り替わらない。
ゴキブリ人間顔の女は顔をディスプレイに近づけて、俺を凝視している。
何か小さい声で言っている。
「殿方、殿方」
くっそ怖いんだが。
ゴキブリ人間顔女はこん棒で画面を殴ってくる。その都度画面が真っ赤になる。この演出は一体なんなんだ?
キーを押しても全然反応ない。と思ったらデスクトップ画面になった。
「悪い夢のようだったな」
気を取り直して俺は直腸ハザードをやることにする
これは大腸菌の変異でゾンビ化した人やいろんな生き物たちのHPを削りケツを掘るというTPSだ。
サポートの大統領の娘アスリーが叫ぶ「BUKKOME、ANAL」
ゾンビが二匹出て来る。
ハンドガンでヘッドショットすると素直に俺の方にケツを向ける。
俺はゾンビのケツの穴にマグナムをぶち込もうとすると、突然ゾンビの頭がカチ割れて倒れた。
ゾンビの後ろにはさっきのゴキブリ人間顔女がこん棒を持って立っている。
俺の悪夢はまだ続いているのか?
違うゲームになぜ出て来れる?なんだこのくそゴツいゴキブリ人間顔の女は?
マグナム弾を三十発程をゴキブリ女の顔面に喰らわせてみたが、少し後ろにのけぞるだけだった。
アスリーをガン無視したゴキブリ女はディスプレイ画面の前に走って来た。
邪魔だと言わんばかりに主人公レオナルドの頭をこん棒でカチ割って蹴り倒す。
画面いっぱいに顔が映ったゴキブリ人間顔女がこっちを見ている。
「またか。また見てるよ俺を」
「ボフー ボフー」
マイクに息を吹きかけるような気持ち悪い臨場感が俺を恐怖させる。
そして俺に向かってそいつは「光男さま」と言った。
俺の名前を言ったのか?そんなばかな。
向こう側から画面をこん棒でぶん殴っている。真っ赤になる。一体何がしたいんだこいつは?
そのうち画面から出て来て俺を殴りにくるんじゃないのか?
俺はドキドキしてきた。
「いやいやまさか、まさか」と言って俺はゲームを強制終了する。
だめだ頭がおかしくなる。気分転換しなくては。
ホメオスタシスだ。
これは俺の精神を保つためなんだ。しょうがないんだ。
俺は、古くなって剥がれかけた子供向けキャラクターシールがいっぱい貼ってある、小学校一年生の時に両親から買ってもらった勉強机の一番下から天涯孤独と書かれた箱を出す。
箱を開けて、穴の開いた円柱のゴムのようなものを出す。TENGAIとロゴが書かれている。
そしてPCデスクの前の椅子に座る。
左手にTENGAI、右手にマウス。それが俺のスタイルだ。
俺はお気に入りのエロゲのお気に入りのシーンをロードする。
カチカチ。
光男くーん。
もっとお願いしますう。
もっと私をぶン殴ってえ。
激しくあなたのこん棒で。
ああん。もっと殴って。
「こんなセリフあったか?」
ボゴッボゴッ。
ああ気持ちいい。
私もこん棒でぶン殴ってあげるぅ。
ボゴッボゴッボゴッボゴッ。
「な、なんだこれ?」
カチッ。
画面が真っ暗に。
「なんだなんだどうした?」
カチカチカチカチカチカチ。
バーーーンという効果音で、ゴキブリ人間顔女の裸体がアップで映った。
「うっわグロ」
即座に左下に視線を逸らしてシャットダウンをクリック。
俺はマウスを思い切りベッドに叩きつけた。
「あああああー」
俺のプレイしてるゲームは一体どうなっている?これはどうゆう仕組みなんだ?コンピューターウィルスってやつなのか?誰かのいたずらかもしれない。でも俺を知っている奴なんてもういない。俺はこの世に居ないも同然の人間なのだから。
一応LANケーブルを抜いとこう。WIFIもオフだ。
俺は嫌な汗でびっしょりだった。足もがくがく震えていた。なんだってんだ怖すぎる。
「あの裸」
俺はネットで偶然、グロ画像を見た時を思い出していた。
もういいやPCは。コンシューマ機だ。昔のゲームはネットに繋がっていなかったんだから。
俺は勉強机2番目の引き出しを開けて、ケースにびっしり入っているカセットから一つを適当に選ぶとカセットの差込口をフーフー吹いてゲーム機本体に差し込むのだった。
スイッチオン。タイトル画面がグルグル回転して、おっ回転機能だ。
「あれ?俺こんなソフト持ってたっけ?」
画面が縮小されるとゴキブリ人間顔女の全身絵になる。
俺は心臓がキュッとなって直ぐにゲーム本体のスイッチを切った。
ベットに倒れこみ布団をかぶって丸くなる。
「誰なんだー?こんな悪ふざけをしてるのは?もうやめてくれ頼むー」
もうどうしていいかわからない俺は立ち上がり、周りを見回しながら自分が誰かに監視されてる体で話しかけた。
「あー知ってたー。全部知ってたからー。俺をそこで見ているんだろー?」
シーン。
くっそ虚しいんだが…。
すると
「ホントに?」
後ろで若い女の人の声がする。
驚いて振り向くと
スタイル抜群のスレンダーボディに赤いビキニアーマーを着て、艶やかな黒髪をポニーテールにした、端正なお顔立ちのお姉さんが俺の目の前に立っていた。
「あっ、すいません」
俺は何故か小声で謝っていた。