(第56回)その後
さて、良かれて思って実施したプログラム修正だが、社内ルールを守らなかったことをこれから上司に報告して処分を仰がなければ・・・
前回、修正版を品質保証部の確認も通さずに出荷したことについて、処分覚悟で事業部長に報告した。
「ん-、なるほどなるほど俳優Aに肩入れする修正版を独断で世界中にリリースしてしまったわけだね。
それは設計課長がいう通り重大な違反行為だね」
うーんやはり処分か、いきなり懲戒免職は無いと思いたいなあ、厳重注意か給与30%カット3ヶ月位で済まないかなあ。
「個人的にはこれまでの功績もあるし修正版で問題は起きていないようなのでお咎めなしと言いたいところだけど、自分には決める権限がないからとりあえず預からせて」と言われ、嫌も応もなく退出した。
二日後事業部長室に呼ばれ
「今回の無試験リリースに関して、設計課長にはお咎めなしとなりました」
「ありがとうございます」
「勘違いしないで欲しいのは、これが特例措置であって、今後も無断でリリースが許可されたわけじゃないからね。社内ではこのプロジェクトの成功を快く思っていない人もいるので、事業部長会議で社長に報告したときに、最近社外事故で大赤字になっている事業部長から、儲かっているからお咎めなしとかありえないですよねえ。と強くクレームついたしね。でも社長が
「今回の判断は
・急を要する
・修正がプログラム全体への影響が極めて少ない内容
という点を設計課長が認識した上での措置であったと考えられることが不処分の理由だ」
と言明してくれたので事なきを得たんだよ。まあ、多少は僕の説明も役立ったと思っているけど。
自分はとにかく事業部長に米つきバッタの様に礼を言って退出した。
営業課長にこの話をすると
「設計課長、鵜呑みにしちゃだめですよ。実際は事業部長は発生した事実だけを報告して厳正な処分を仰ぎます、って言っただけらしいよ。でもうちの本部長が、そうはいっても稼ぎ頭だし、ここで設計課長を解雇したら、お客様への説明や、今後のプロジェクト継続が難しくなり、会社運営上、大きな不利益になりますよ」と言ったのが効いたんじゃないかな、そのあとで事業部長が「確かに、リリースは急を要した上、修正箇所はプログラム全体には全く影響ない箇所のみだ」と急に言い出したのを社長が受け入れた、ということだからね。
なるほど、どうもうまくいきすぎてると思ったけどそうれなら納得がいく、自分を切り捨てて一番困るのは事業部長だし、営業本部長の発言は渡りに船だったわけだ。やっぱり出世する人は臨機応変、瞬発力があるものなんだなあ、と妙に納得してしまうのであった。
うーむ結果オーライだけど、舞台裏を知っちゃうと興醒め感があるなあ。クワバラクワバラ