(第55回)サポートその後
サポート初日はエースの活躍で乗り切った、2週目以降はもう余りないでしょ
サポート初日はエース技術者の力で乗り切り、その内容を翌日以降のチームに巨宥した。
その甲斐あって2日目以降も類似回答でほとんど乗り切れた。さて今日から2週目である。
もう何もなかろうとタカをくくっていたら、早速トップユーザから 連絡あり
「先週以降出荷した車から続々警報が上がってくる。事実なら問題ないが急に性犯罪者が増えたとかの情報もなく確認願う」という内容だった。
エースはすぐさまログを確認。
「確かに同一人物の画像が多数検出されてますね・・・しかし、この人は・・・」エースが画面に出した人物を見て自分も驚いた。誰もが知る有名俳優のAである。なるほど、彼が性犯罪者だというなら露出が多いのでこうなる理由も説明がつく、しかし彼はもちろんExcelリストにもなく・・・するとこれは表情解析からの予測検知、ということか
エースが「これはシステムが犯罪者有力候補として推量した予測検知です。」と教えてくれた。
ならば、システムを信じるしかない。懇意にしている警察関係者にこのことを伝えたところ、彼はひそかに内偵することを約束してくれた。
自分はカーメーカーには、新たな犯罪者候補と思われるので警察に調査依頼したことを告げ。担当者は結果を教えてもらえれば問題ない。と言って通信を切った。しかし心は重い。
件の俳優AはこのカーメーカーのCMに出演しており、もし特殊性癖が明らかになればCM中止はもちろん、違約金やら俳優人生終了という末路につながる、今回ばかりはウチのバグであったらいいのにとさえ思った。しかし、それから2日後調査をお願いしていた刑事から連絡があり、証拠が固まったので明日逮捕するとのこと。あとはニュースやワイドショーで知った話だがAは3年前にアカデミー賞受賞後、良い作品に巡り合えず、ストレスを抱え、ふとスマホで見た幼児ポルノ映像にのめりこみ、自ら盗撮など繰り返していたとのこと。ワイドショーはこのシステムについても言及し
「新たな犯罪者を検出した」としてほめたたえてくれた。報道の公平性かもしれないが自分は喜ぶ気にはなれない。俳優Aは確かに予備軍で間違いないが、まだ何の罪も犯していないのだ。この状態で警察は本当に逮捕できるのか。ひょっとすると冤罪防止を標榜するこのシステムが生み出した冤罪ではないのか
有名芸能人が幼児ポルノ愛好者だということは確かに致命的なスキャンダルであり、留置所でも刑務所でも娑婆から隔離されたところに逃げ出したくなるだろう。こんな青臭いことを考えているのは自分だけだろうから他の人の話が聞きたいと思ってん並木さんに連絡し、自分の思いをぶつけてみた。意外にも
「そうですねえ、僕も同じことを考えてました。確かにリストにあるメンバーは逮捕されるべきですが候補医者の場合は、表示の仕方を変えましょうか。例えば今のアラームではなく、もっと弱い「お知らせ」
機能を付けてそれとなく通知するとか
ああ、さすがは並木さんだ「是非、それでお願いします。費用はいくらでも払いますので」「いやいや、大した修正じゃないので無償で、3日後にはお届けしますよ」
3日後に修正版を貰いすべてのユーザーに新機能の内容説明と思いに送付した。
すると翌日カーメーカー担当者から連絡が入った
「いやあ機能追加ありがとうございました。Aさんは大人気の俳優さんなので今回の件でCM鋼板とか違約金請求と幹部がいきまいていましたが、この修正の話をしたら、なるほどシステム側でも大きな罪ではないと考えているなら。騒ぎが収まるまでCM放送を見合わせて、また次期CMはAさんで行くことになりそうです」私はお礼を言って通信を切ると自然に笑顔になった。ああ、これほど心から嬉しいと思えることは人生に何度有ったろうか。悩みを人に相談するのは大切だなあ
いやあ、なめたらいかんねしかし、今回出荷品質確認を品櫃保証部と実施せずに出しちゃった。クビかなああ