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冤罪  作者: ニベア王子
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【第5回】メタモルフォーゼ

さて、前回で自分を痴漢に仕立て上げると決意したので、その取り組みである。

さて、自分で痴漢になりきろうと思ったものの、どうすればいいのだろう。

まず考えたのは人込みで行きかう人々を眺めながら、対象を物色することだった。

まあ渋谷とか新宿とか日本有数の人混みが最適なのだろうが、自分の家からは遠く、普通の散歩時間に行ける範囲ではない。

このため、最寄りのJR駅に向かった。そこは大した駅ではないが、他社の鉄道2路線が交わるターミナル駅なのでそこそこ人が多い、また近隣に国内有数の海水浴場があるので、それなりに薄着の女性が大勢存在している。

ではあるが、実際に痴漢してしまっては元も子もないので、本物の痴漢ならここでやることはまずは対象者の物色であろうと推測し、自分も取り掛かった。

しかし、普段は「あんな格好では痴漢にあうぞ」という女性がうじゃうじゃいるのに、改めて見ると

そういう格好の人はほとんどいない。やはり企画倒れか?と思っているところに、大きな声で会話している数名の外国人女性が現れた。自分は外国語はうといが、おそらく中国人であろう。背が高く、とにかく薄着で、これから海に向かうと見える。

さて自分が痴漢の心境になるにはどうすべきか自問していると、女性たちは次々と改札から入場し、海に向かう路線のホームで電車待ちの様子。これは尾行するしかない、と腹を決めて自分も入場した。露骨にあとをつけたらストーカーと大騒ぎになるだろうし、なんせ彼女らは気性が激しいのか普通の会話でも怒鳴っているような大声である。この人たちが怒り出したら一体どれほどの騒ぎになるかと思うと同じ車両に乗ることがためらわれた。しかし、まてよオレ、ここで隣の車両に乗ったら自分が痴漢の心境をシミュレートすることはできないのでは?と妙なサラリーマン根性が発動し、ありったけの勇気を振り絞って彼女たちと同じ号車に同じドアから乗車した。幸い電車はすいており自分は彼女たちの対面に座ることができた。でもでも、あまりジロジロ見つめる勇気はなく、視線を気取られないようチラチラと盗み見た。変な話ですが、逆にこのほうが興奮するものですなあ。

なんだか本当に自分は痴漢目的で被害者を物色している気になってきた。よーーし、これを2,3日繰り返せば本当の痴漢になれるかも=いやいや、それはまさにミイラ取りが、というやつで

ある程度心境を会得したと思ったときにその表情を自撮りして、特徴点抽出のサンプルにするんだったよなあ。

その日は電車発車前に下車して、改札を出ようとすると自動改札でエラーとなり、駅員のいる窓口にいくと「入場したけど乗らないのですか?」ときかれたので、咄嗟に「ああ、会社から電話があって、戻らなきゃいけなくなりました。というと、入場記録を消去して、無料で出してくれた。本当のことは言えないし、なんだか申し訳ない。これを毎日やったら別の意味で怪しい人物になってしまうので、明日以降は少なくとも一駅は乗車して、そこから徒歩で帰宅しよう

そのほうが運動にもなるしね!

なかなか痴漢道は険しいものである。


乗車せずに出場したりと精神的負担が大きすぎる。もともと計画性が足りないので、今回の反省をもとに次回はうまくやろう

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