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冤罪  作者: ニベア王子
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【第4回】徐々に発進

さて、開発推進に向け社内アンケートを作るのでしたな。

とはいえ、自分は痴漢行為をしそうな人、あるいは経験有無を教えてください。

といって、「実は昨年通勤途中で捕まっちゃって・・・」と回答くれる人は居なかろう。

そこで犯罪者予備軍洗い出しのために」以下を女性社員向けに発信することにした。

社内で、性的なまなざしを向けられた相手を教えてください。

もちろん用途を明記し、情報提供者の秘密厳守を誓約した上である。

これも回答は無いだろうと思っていたら、期限の一か月の間に、なんと十数名の回答を

いただいた!それだけでも驚きであるが、回答内容でさらにビックリした。

回答者全員が、会社役員の秘書の方であり、秘書をしている役員が自分の胸元やお尻を見ている気がする、というものだった。やはり会社で成功して個室を持ち、秘書などあてがわれると

自分が何をしても許される存在になったと勘違いするのであろうか?

もちろん幹部の方々の顔写真は公開されているので、それを集めて画像認識の特徴点抽出をして

規則性を見つけることは可能である。が、しかし、しかしである

公開されている写真は当然ながら、真顔で撮影したものであり、秘書たちに向けた猥褻な視線で

公開写真を撮られているはずがない

ならは、情報をくれた秘書たちに盗撮をお願いしたいところだが、強力なコネクションがあるわけでもなく結局アンケートは驚きを得ただけで終わった。

しかし犯罪予備軍のデータを作らんことには開発が始められない。

何とか突破口を、と思ってひらめいたのは「虎穴に入らずんば虎子を得ず」という

ことわざだった。つまり、自分が痴漢をしたいと自己暗示をかけ、駅や街中で女性を物色する

ことで、痴漢と同じ心持になり、顔つきや目線も似通ってくるという考えである。

ここまで筋道だっていると思ったが、ふとこの話の冒頭で

自分は痴漢の冤罪がとてつもなく怖いと告白したことを思い出した。

しかも今度は冤罪でなく、犯罪に足を踏み入れようとしている。

でもここで保身を優先したら何も始まらない、昔読んだ偉人伝でも伝染病ワクチンを家族で試した医師とか、黄熱病を研究して、自らその病で亡くなったかたがいるではないか

犯罪者と似通った気持ち、顔つきになっても実際に犯罪を犯さなければよいのだ!という

天性の楽観論が背中をおしてくれた。さーて、早速痴漢の気持ちになってみますか、ウヒヒヒ


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