(第39回)県警本部様稼働編2
県警本部は強かな運用で、サーバーの記録容量枯渇が心配である。追加発注貰えるかしらん。
納入から一週間経過、相変わらず活発に追跡、録画が行われており、このままでは今月中にサーバーのストレージが容量不足になる見込み、営業課長に相談して県警本部長に面会時間を取っていただいた。
「今日はどういったご用件でしょう。営業さんが同席なので売り込みですかな」
「いえ、システム運用のご相談ですが、会議の方向次第では機器追加の売り込みになるかもしれません。まず、納入から県警様での運用状況を確認させて頂きましたが、録画機能の稼働がとても多く、サーバーの記録容量が今月末を待たずに不足します。増設は費用を頂戴できれば簡単ですが、運用方法次第で増設不要にもできます。その方法は
録画してから一週間経過したものは削除/上書きすることです。
しかし、これも録画の利用頻度が現状維持前提であり、さらに録画機能が多用される様なら、一週間が3日になり1日になることもあり得ます。
また、違うやり方として、容量が一杯になったら一番古い物から順次上書きする運用でしたら、ちょっと設定を変えるだけで可能です。いかがいたしましょう」
「なるほど、それはもちろんいったん録画したものは消したくないですし、かといって予算が無限にあるわけでもないので、難しいところですね。記録容量かあ、素人考えですが、動画の画質を落とせば時間は伸びますよね」「はい、その通りです。しかし、あまりに圧縮率を上げると、再生したときの画質が極端に悪くなりますよ。そもそも、長期保存する必要性は有るんですか、犯罪が発生していないのに?」
「そうですねえ、私、というか警察がすべての犯罪を把握しているわけでなく、発生してから捜査することがほとんどなのですよ、そうすると事件発生時に誰がどこにいたかという記録はアリバイになるので大変貴重です」
「なるほど理解しました」すると営業課長が発言を始めた。
「本部長、アリバイだけで良いならGPSだけを保存すれば画像不要と考えて良いですか?」
「おお、そうですね、しかしGPSデータが正しいことを映像でも確認したいですね」
そろそろ出番かな?
「では私の案ですが、いったん動画記録開始したら、一時間おきにGPSデータと静止画像を保存して動画は削除、というので折衷案になりますか」
「うーん聞いた感じは良さそうですが、見てみないと何とも言えませんな」
「ご尤もです。では持ち帰り試作します。明日中に試作品がいつお持ちできるか、及び採用された場合の費用概算をご連絡いたします」
「採用しなかったら、どうします」
「最初に申し上げたように運用でカバーして既存システムでお使いいただくことになります」
「了解。試作品に期待ですね」
「おそらく試作品の性能を確認するのに、持ち込んでから録画では時間がもったいないです。持ち込み日の前日にリモートで実行して、実運用データを見ていただこうと思いますが、許可いただけますか」
「勿論です。それは助かる」本部長室を出た私はすぐに並木さんに電話して、試作品の納期と費用見積もりを依頼した「そうですね、直感ですが、納期が3日間、費用はほとんどが品質確認試験代で自分の3日間人件費ってとこですね」まったく。並木さんにはかなわんな、こんなことも見越してプログラムはつくってあり、動作確認も済んでいるだろう。
「値切って悪いけど、テスト項目リストもらってうちでテストしますよ」
「いやあ、お見通しかあ。それなら無料で提供しますよ」
神様は居るものである。
神様仏様並木様の霊験により、無料で売り物が手に入る。いくらで売りつけようかしらん。バチあたるかな?