【第2回】開発申請
さて、開発の社内提案を考えなければならぬ。
開発に掛かる費用を会社に負担させるのは当然ながら容易ではない。
最初に上司の承認次に部長/本部長
最後に事業部長の承認を得てやっと認可となる
直属上司は自分の実績にもなるのでやや甘めに採点してくれると思うが
部長以上は失敗したときの責任を恐れて逃げ腰
事業部長に至っては社長から責任追及されるため
余程のことがないとハンコもらえないと思う。
また、自社が中途半端に大企業であり、親会社に至っては世界有数の電機メーカーときているから、ちょこっと儲かりそうです、などという計画では
部長段階でハネラレル。
もっともらしい社会的意義を謳わなければ・・・
社会的意義?
まあ冤罪防止には自分としては大いに意義は有るが、個人の意見でしかない。
冤罪よりも犯罪、特に性犯罪防止でなければだめだよなあ。
ということで、もともと自分の冤罪よけ目的であるが、提案書には犯罪防止/抑止と謳うことに決めた。
【社内戦略開発提案書】:件名性犯罪防止技術開発
テーマ:現在の高ストレス社会においては
・混雑する通勤電車での痴漢行為
・駅の階段でのスマートホンによる盗撮行為
発生が懸念され実際に多発している
我々Hグループとしては
犯罪の防止、抑止に貢献するシステムを提供することで
社会に貢献する必要がある。
システム構築にあたり
当社が有する
・画像認識、機械学習技術を活用し容疑者を事前に検知し、本人に注意喚起するこ とで犯罪発生を防止できる
また、防止に失敗しても
容疑者情報を関係者に展開することで犯罪発生時に速やかな検挙に結び付けられる
開発工程
① 性犯罪を起こす可能性のある人物リスト作成
② リストに基づく特徴点抽出→画像認識ソフト開発
③ 鉄道・警察関係者への協力依頼~駅・電車にシステム設置して試運転
④ 実績上がり次第鉄道・バスなど各社に売り込み+警察関係者にプレゼン
⑤ 性犯罪前科者リスト入手して機械学習し性能向上
開発のポイント
・最も難しいのは①。実績がない段階では警察に前科者リスト提供は無理
従って自力でのリスト作成が最難関である
実施案
①社内女性社員にアンケートを依頼:社内でセクハラしそうな人は?
の上位者顔写真でリスト作成、その他ニュースで類似事件の逮捕者写真を加える
必要期間1ヶ月1名=費用1人月
②画認技術者3名:2ヶ月:=6人月
③営業2名1ヶ月=2人月
④営業1技術者1名1ヶ月=2人月
⑤技術者2名2か月=4人月
合計15人月=18M\
これでK部長に提出した。
Kさんは生粋のエンジニアなので②と⑤に携わるエンジニアの負荷と
実現性の確かさに懸念を示した。
とはいうもののこの予算検討時期に「提案無し」では望めないという大人の事情があり
しぶしぶ承認してくれた。
次にE本部長に説明したところ
営業部の協力が得られるか懸念を示した。
自分も年の功で
これは予想していたので仲の良い営業課長で面白いこと好きの友人に
根回し済。その場で本部長に電話してもらい協力意思を確認して
承認もらった
最後に事業部長この人は自分の天敵で
自分の不才を一番知る人物である。
またここまで上り詰めただけあって嗅覚が鋭く
仮にこの開発が成功し、社会貢献につながったところで
自分がさらに上位職位に上がれるか?
あまつさえ成果が出なかった時の責任は?
という点で逡巡している様子が手に取るようにわかった。
何とかして翻意させないと、考えろ,オレ!
そのとき、天啓がひらめいた
S事業部長
まずは本件に関するシステム特許を執筆します。
その権利化について特許グループのokが取れたら
承認いただけないでしょうか?
もちろん個人の権利配分に事業部長も入っていただきます
自分と折半、50%と思っています。
この開発が成功すればこのシステムは
全警察署
全鉄道駅
バス、タクシー各社
に採用されるはずです。
ここまで言えば利に聡いSさんは
パテント料の大きさに気づくはずで
案の定承認をもらえた。
さて、とは言え大変なのはこれからだなあ