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8 ミーナットとの出会い

 話は一年前にさかのぼる。


 薬草を探すために森の奥深くに来た時の話。

 その日は天気が良く、森の中、少しだけ見える太陽に照らされながら師匠と二人で歩いていた。

 歩いていくにつれて周囲の雰囲気が変わっていき、見渡すと、植物がうっすらと光っているのが分かった。気にはなったが、体に影響が出ると聞いたので、観察するだけにしておく。

 師匠の話を聞きながら歩いていると、師匠が急に立ち止まった。

 それにつられて足を止め、指をさされている方を見ると、そこには、本で見た薬草と似通った植物が群生していた。


「あれが今探している薬草だよ。.........おや?」


 そこで言葉を区切ったと思うと、遠くから獣の遠吠えが聞こえた。慌ててあたりを見渡すと、白茶色のフクロウが飛んできた。


「わ、わっ」


 慌てて手を伸ばして受け止める。不思議な感触がして、よく見てみると、フクロウの体に大きな傷があるのが見えた。ただ、傷からは血ではなく、白い光が漏れ出ていた。


「し、師匠」

「静かに」


 慌てて口を閉じると、再び獣の遠吠えが聞こえた。

 茂みが揺れたと思うと、そこから一回り大きな狼が飛び出してきた。

 牙をむき、うなり声を上げている狼の目線の先には、先ほど胸に抱いたフクロウがいる。どうやら、あの狼が傷をつけたのだろう。


「フォゲット」


 名前を呼ばれ、顔を上げる。

 無意識のうちにつかんでいた師匠の服を握る。


「動かないで」


 その言葉を合図というように狼がとびかかる。だが、こちら側にたどり着く前に、地面にたたきつけられる。

 師匠の手には、どこからか取り出した身の丈ほどの杖が握られていた。


「ここは引いてくれないか。君を殺したくはない」


 そう言うと、狼は立ち上がり、背を向けて去っていった。

 それを見てホッとして、ハッと思い出す。


「師匠。この子、どうすれば助かるの?」

「安心して」


 そう言って空いた方の片腕でフクロウを抱きかかえると、薬草の生えている場所へと近づき、杖を振る。すると、薬草から出た光がフクロウを包み込み、たちまちのうちに傷がふさがる。

 その光景に目を奪われる。それと同時に、不思議に思うこともある。


「気になるかい?」


 そう問いかけられ、反射的にうなずく。


「この子は精霊だよ。精霊は主に魔素の塊のような存在でね。魔素があれば大抵のことはできるんだ。それが傷を治すことでも」


 そこで、さてと間を置き杖で地面をコンと叩くと、杖が光の粒子になり、右手のあたりに巻き付いて消える。

 師匠がこちらを向き、顔を見たかと思うと、手を伸ばし、頭をなでてきた。きっと、不安そうな顔をしていたのだろう。


「大丈夫ですよ」


 そう言うと、師匠が少し笑った。


「不測の事態が起きてしまったけれど、何とかはなるね。フォゲット、今日はもう戻ろう。それと、精霊についても、これから学んでいこう」

「はい」


 家に向かって歩き出した師匠の背を追いかける。その間、精霊について質疑応答を繰り返していた。

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