7 謝罪
「すみませんでしたぁ!」
朝起きて眠たい目をこすり、店の一階に降りると、開口一番に謝罪の言葉が飛んできた。頭も深々と下げていて、背中まで見える。
「き、気にしないでください。僕は大丈夫ですから...」
どうやら、昨日勢いに任せて店を追い出したことや、ろくに掃除していない部屋に泊まらせていたことが今日になって申し訳なくなったらしい。
「いや、謝らせてください...。お師匠様が子供を拾って育ててたなんて考えもしなくて驚いて...」
「大丈夫ですから」
やっとのことで頭を上げ、顔をこちらに向けたマイは、ぼさついた髪を適当に結んでいる。そこからは、特徴的なとがった耳が見えている。
「あ、そうだ。名前しか言ってなかったよね。改めて自己紹介しようかな」
そう言って、マイは胸に手を当てた。
「私はマイ。見てわかるかもしれないけど、エルフです。こんなところで店をやってるのには何も言わないでください。一応、魔法使いでもあります」
「あ、僕はフォゲットです。師匠の弟子で、錬金術師です」
『僕はミーナット。精霊』
ミーナットの最低限の自己紹介に苦笑してマイを見ると、目を見開き、驚いていた。
何かあったのだろうかと、周りを見渡すが、特に何もないように思う。
もう一度マイを見ると、今度は頭に手を当てて悩んでいた。
「え?」
「?」
つい、声が出たのだろうか。慌てて口に手を当てる。そして、また口を開ける。
「えっっと、フォゲット君が錬金術師で、生意気なフクロウが精霊?」
『ミーナット』
「...ミーナットが、精霊?」
「そうですよ」
すると、頭を抱え悩みだした。
「フォゲット君。そういったことは、あまり人には言わないように」
「?はい。大丈夫ですよ。師匠に言われてますから」
マイさんがホッとした表情になる。そこで、そういえばと思い出し、ポーチから回復薬を取り出し、渡す。
「あの、これあげます。店に役立ててください」
「あ、ありがとう。ところでこれ、いや、なんでもない」
そこで言葉を区切ると、椅子を用意してきた。ついでに、すすめられたので、僕ももう一つの椅子に座った。
「あのね、知ってるかどうかは聞かないけど、精霊はね、最近は人の前に姿を現さなくなっている幻の存在だよ。錬金術のことは聞かないけど、精霊とはどうやったら出会えるのさ」
「それはですね、昔の話になりますけど───」
そこから、ミーナットとの出会い話を話し始めた。




