5 衝撃の事実(?)
『降りるよ』
少しの衝撃の後、地面の上に足をつける。
「ありがとうミーナット」
すると、青年が──ミーナットがフクロウの姿に戻り、肩の上に飛んでくる。
ミーナットは精霊であり、人間とはかけ離れた身体能力に合わせて、人と動物の姿に自由に変わることができるらしい。
『ごめんねフォゲット。一人にしちゃって』
「大丈夫。ちょっと驚いたけど。それより、一般人を傷つけないようにって師匠に言われてたじゃん」
『でも、あいつフォゲットに手を出したんだよ!仕方がないじゃないか』
「うーん...確かに、師匠が言ってたのは一般人だし、手を出してきたから、仕方がない、のかな?」
乱れていたフードをかぶり直し、あたりを見渡す。
できるだけ、もう目立たないように移動する。気になるものがあっても無視だ。
「ミーナット。宿の場所は...」
「い、いた!!」
『げっ』
声のいた方に振り返ると、店であったマイさんが走ってきていた。
不思議に思うと、目の前に来た途端、地面にへたり込んだ。
「よ、よかった。う、疲れた。もう無理」
「あの、大丈夫ですか?何か用でしょうか...」
僕が出て行ったあと、何かあったのだろうか。忘れ物でもしただろうかと思うと、急に顔を上げて、必死そうに言った。
「やっぱ、うちに泊まっていって!」
『追い出したの、そっちじゃん』
「ゔぐっ。それは、ちがくて...だって、あんな騒ぎが起こるとは思わないじゃん...!」
マイさんが言うには、僕が店から出た後、なんだか町がうるさいと思って情報収集したところ、僕が町の人に絡まれたことを知ったそうだ。
そして、こんなことをお師匠様に知られたらやばいから急いで探していたとのこと。
「もう怒られるのはヤダ......」
どうやら、そのお師匠様に強烈なトラウマがあるらしい。
なんだかかわいそうなので、ありがたくその提案を受け入れることにした。
ミーナットは嫌がっていたが。
「ありがとうございます!じゃあついてきてください。まあ、家って言ってもさっき来てもらった店のことだけど」
そんなことを言いながら、先導する。
多分、店までは遠いと思うので、気になったことを質問をすることにした。
「あの、マイさんの師匠さんって、どんな人なんですか?」
「ん?えっとね、あの人は魔法が人一倍扱えるけど、その分、情熱?がすごくて、ちょっと間違えただけで杖で...って、フォゲット君も知ってる人だけど」
「え?」
二人して首をかしげる。
何もわかってないようなミーナットも一緒に首をかしげる。
「え?だって、私の師匠とフォゲット君の師匠、同じ、だよね?」
「え、名前って、レアンですか?あの、店で確認してたけど」
「そうだけど...はっ、もしかして、お師匠様、私のこと教えてない!?」
そう言うと、急に手をつかんできた。
何事かと思うと、マイさんはいい笑顔で言った。
「私はマイで、あなたの姉弟子だから!これからよろしく!」
「あ、ええと、よろしく?」
そんなことを話しながら、歩く町は、なんだか少しきれいに見えた。




