3 謎の店と店員
「わぁ~」
街並みを見上げながら歩く。
森の中では見たことのない、というより、本の中でしか見たことのないものがたくさんあり、心が躍る。
「ミーナット、すごいね。家もきれいだし、人もいっぱいいる」
『わかってるから。人がいるときは、あまり僕に話しかけないように』
「あ、そうだった」
口を閉じ、師匠に言われた店へと向かう。どうやら、弟子が店を営んでいるらしく、町に来たら、その店を探してほしいと言われたのだ。ただ、その道中では気になるものが多い。
道行く人は様々な服を着てるし、店に並んでいる品々に気を取られる。視界に映る子供たちや、猫たちがどこへ向かっているのか。
そんなことを考える。
『ねぇ、行き過ぎてるんじゃない?あそこの家じゃない?』
「......え?あ」
後ろを見ると、目的の家が遠くのほうにあった。
「あ、ほんとだ。ありがとう」
『どういたしまして』
振り返り、また歩き始める。そして、少し大きめのポーチから手紙を出す。師匠から預かったものだ。
「えーと、ここだよね」
こぢんまりとしていて、普通の家のようだ。ただ、看板があることから、多分、店なのだろう。いわれないとわからない気がする。
息をのみ意を決してノックをし、ドアを開ける。
「すみませーん...」
窓があるのに薄暗い雰囲気を出している店には、数個の品物しか置いていないし、埃が少し積もっているようにも思える。
もしかすると、客があまり来ていないのでは。
家にしか見えない店の外見も何か関係しているのだろうか。
一人納得していると、店の奥のほうから声が聞こえた。
「あ!お客さん...!」
声が聞こえたほうを見ると、伸びきった金色の髪をぼさぼさにした女性が現れた。
「お客さんが来なくて、店が潰れそうだったんだよ。よかった~」
こちらの反応も見ず、畳みかけるように話してくる。
「商品はいいものだけを取り入れてるんですよ。ほら、この回復薬とか、そこらでは買えないような貴重なもので──」
「あ、あの!」
大声を出すと、ようやく動きを止めてこちらを見る。
「ん?どうかした?」
「あの、僕、客としてきたのではなくてですね......」
そう言いながら、手に持った手紙を渡す。
「師匠からです。あの、ここに来たら、一目でわかる金髪の人に渡せって」
「ん~?」
僕の手から手紙を取ると、おおざっぱに開けて中身を取り出す。
「うん。うん。...うん?」
読み進めていくにつれて、顔が蒼白になっていき、今にも倒れそうになっている。そして固まり、動かなくなった。
「あ、あの?」
「ねえ、君」
「はい」
彼女の顔を見ると、絶望のどん底に落とされたような、信じられないものを見たような、そんな顔になっていた。
「君の師匠って、もしかして、青髪の、レアンっていう、魔術師?」
「はい、そうですが...」
そう言うと、彼女は頭を抱えてうなり始めた。
どう見ても困っている。声をかけたほうがいいだろうか。
「あの」
「君、名前は?」
「フォゲットです、けど」
「私はマイです。一言だけ言わせてください」
そして一呼吸おいて、後ろを向かされ、背中を押され、
「一日待ってください!!」
店の外に追い出された。
「え、ちょとお!?」
バタン!という大きな音とともに、ドアが閉ざされる。ただ、店の中から形容しがたい声が聞こえてくる。
聞けば聞くほど、なんだか悲しくなる。
「そっとしてあげようか」
『そうだね...』




