25 神様の祠
「神様?」
「そうよ!村を守ってくれている神様!」
「近付くと神罰が下るから、だめって言われてるんだ」
「村が豊作で、襲われたりしないのも神様のおかげなんだよ」
ワイワイとそれぞれが好きに語り続けているのを聞きながら、フォゲットは考える。
本当に神様がいるのであれば、封印する理由が分からない。もしかすると邪神なのかもしれないが、聞く限りそうとは思えない。魔術式が違うとも考えられない。そもそも、その神様を使って何をしようとしているのだろうか。
だんだんと神様のここがすごいという話題から、どんな姿をしているのかという話題に切り替わり、論点が切り替わっていく。
「――だから、神様は絶対に綺麗な姿で」
「あの!」
勢いに任せ、話の腰を折る。
「その、祠って近づいちゃダメなんですよね」
「うん、そうだよー」
「じゃあ、近づかないようにするんだったら、場所もわからないしどうすれば……」
「あ、確かに」
そう言うと、三人で一気に僕の背中の向こうの方、森の奥を指さした。
「あっちの方にあるから、気を付けてね」
「あ、ありがとうございます」
「そんなことよりもよ!王都の話、もっと聞かせて!!」
女の子が思い出したかのように顔を近づけてくる。
このままじゃらちが明かない。日が沈んでしまうんじゃないかと不安になりながら、どうこたえるのが正解か悩んでいると、三人が唐突に耳を動かす。そして、焦った顔になった。
「ヤバい、お母さんたちが!」
「探しに来てる!」
「ごめんなさい!話はまた後で聞くわ!」
それだけ言い残して、すごい勢いで逃げていく後ろ姿を呆然と見つめる。
あっけにとられて動けなかったのを、遠くから聞こえる声で意識を取り戻し慌てて移動し始める。
(三人には申し訳ないな……)
向かう先は、三人が指さしていた方向。祠があると言われている場所だ。
今回の目的は、悪だくみを未然に防ぐことだ。そのために最善の行動をしなくては。
草木をかき分けて進んでいく。大体の場所が分かれば、そのあたりを探せばあるはずだ。そうして進んでいくと、獣道のような、よく見れば道に見えるものを見つけ、僕はそれをたどって進んでいく。
進むにつれて、体を包む不思議な感覚があらわれていく。不快ではなく、むしろ心地いいものだ。
その先で、発見した。
「……あ!あれかな?」
僕の身長ほどの祠を発見し、近寄る。その際、近寄りすぎないように気を付ける。
慎重に近づいてみてみると、年季の入った古い木材で作られており、大昔に作られたものだとわかる。
(確か、魔法陣の形的には……)
祠の近くでしゃがみ、地面に手を当てる。軽く魔力を流すと、それに反応するようにうっすらと魔法陣が浮かび上がる。それは、もらった魔方陣と同じものだった。
僕は杖を取り出し、錬金術を使う。
物質の変化。
点と点をつなぎ合わせるように、組み替えては作り変える。どうやら、中に封印されたものの力を吸い取り、周りに分け与えるといった魔術が使われているようだ。僕はそれを無効化し、力を封印するというものだけにした。続けて、呪術の性質を変える。形だけ整えて、近付いても何の影響もないようにする。
プハッと息を吐いて、汗をぬぐう。成功したようだ。
そろりと近づいてみても何も起こらず、祠に触れても何も起きない。
安心して胸をなでおろす。
(僕の方は終わったから、早く戻らないと)
ここにはもう用はない。誰かに見つかる前に村に戻らなくては。
速足に祠を後にする。子供たちから聞いたことを師匠に報告しなくてはならない。祠の中にいるものが、神様だと慕われていることを。
フォゲットが去ったあと、祠の中にいた存在が、目を覚ました。
うつらうつらと漂う思考で、現在の状況を思い出す。あの時から何年たったのだろうと。
祠の中は暗くて狭くて落ち着かない。それでも、外に出ようとは思わない。外に出ようとも、体を構成する魔力も依り代もない。今の状態は、意識だけがある不思議な状態だ。
その存在は、ただじっと待ち続けた。何かが起きる予感が、体を突き刺していたからである。
懐かしい気配と、期待という感情が身を支配し、復活した意識を手放さないようにする。
じっと、じっと、ずっと待ち続けたのだ。この瞬間を。手放すわけにはいかない。
『ワレ』は、この時を、ずっと待っていたのだ。
待たせてすみません!!!
早速ですが次も遅れそうです!!




