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23 村へ移動と情報整理

 街の外で師匠と合流し、パティエンスさんからもらった情報と紙を渡すと、複雑そうな顔をした。

 僕らは見てもわからなかったのだが、師匠は一目でわかるなんてすごいなとぼんやり思っていると、珍しく眉間にしわを寄せた。


「……これはまた、奇怪なものだね」

「どういうことですか?」

「フォゲット。君にはどう見えている?」


 もう一度紙を渡され、もっと詳しく見てみる。師匠から教わった魔術式のどれにも当てはまらない、というよりか、似て非なるもののように見える。どれも見たことがなく、想像もできないが、少しだけわかることがある。


「えっと、多分、二つの式が組み合わさっている?」

「そう、正解」


 師匠はもう一度その紙を見て、感心したように言う。


「これは、エルフの術も入っている。それと、呪術も」

「ええ!?なんでそんなものが」


 そう驚くと、師匠はまた悩み始める。それほど、今回のことは予期していなかったことなのだろう。

 僕とミーナットは顔を見合わせて、師匠の返事を待った。

 いつにもまして真剣な表情をする師匠につられて、緊張する。


「――何かを閉じ込めている、のか……?」

「そうなんですか?」


 魔術に関してはからっきしのミーナットを置いて話は進む。師匠が僕に紙に書かれた魔術式を見せながら説明を始める。


「中心に書かれているのが、対象を閉じ込める術式。周りを囲っているのが、呪術」

「はい」

「この形はそのまま、対象を中心に配置して発動するものだね」

「へえー」

「呪術には対象に近づき触れた物に呪いをかけるもので……」

「ふんふん」

「対象の性質を利用して周りに影響を与える……」

『――全然わかんない……』


 僕らはハッとしてミーナットを見てみると、フクロウ姿で不貞腐れた顔をしていた。


『魔術の話、難しい……』

「ご、ごめんねミーナット」

「私も語りすぎたね。先を急ごう」


 話をいったん終わらせて、村を目指し歩き始める。

 木が少しだけ切り開かれており、ぎりぎり馬が通れるかどうかといった道を歩く。気を抜けば外套が草に絡まってしまいそうだ。

 師匠が先導して、そのあとに僕がついていく形で、先へと進む。


「歩きながらだが、少し情報を共有していこうか」

「はい」

「もちろん、ミーナットが分かりやすいように」

『当然。簡単に説明してよね』


 現在、わかっているのはこうだ。

・獣人の村で怪しい動きがみられている

・獣人たちの間で不安が募っている

・村の近くにある祠で騒ぎを起こそうとしている

・その祠にかけられた魔術からみると、何かを封印しているのではないか


 そして僕たちは、その問題を解決し、仲を深める手伝いをしなくてはいけない。それも、問題が増えないように。改めて考えてみると、少し難しそうだ。

 そう思っていると、ミーナットがふむふむと納得したようにうなずく。


『やることがはっきりしてていいね』

「そう?」

『だってその、祠?を無力化してからなら、いくらでも話し合いの時間とれるじゃん』

「うーん、そうだけど。簡単にできるかなぁ」

「ミーナットの言っていることは正しいよ」


 そう言った師匠のほうを向く。


「暴れてられてしまっては、全てがうやむやになる可能性がある。その前に、不安要素は先につぶしておいた方がいい」

「じゃあ、祠にかけられた魔術を解いた方がいいんでしょうか」

「そこは怪しいところだね」


 師匠は歩きながら少しだけこちらを向いた。


「何が封印されているかが分からない。国を襲おうとして力を利用しようとしているのなら、何か世界に仇なす力を持つ存在がいる可能性もあるからね」

「あ、そうですね」


 何か理由があって封印されているのであれば、その理由は悪いことの場合が多い。むやみやたらと封印を解くことは避けた方がいいだろう。

 だとすると、どう動くのが正解なのだろうか。獣人は昔から、自分たちの種族以外を敵視しており、仲を深めづらい。何を言っても聞く耳を持たないだろう。特に、僕らのような人間に対しては、よりあたりが強い。


「不安にならなくていい。この後コチア様と合流するようになっているからね」

「そうなんですか?」


 少しずつ、道が広がってきたため、師匠の隣に並ぶ。顔を見上げると、安心させるように僕の頭を撫でる。


「二人にはそれぞれ仕事を伝えるから、着いたら行動に移るように」

「はい!」

『はーい』

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