表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/24

21 教会の神父

 次の日、マイさんにはまた出かけるということと、数日帰ってこれないことを伝えた。それもこれも獣人の村に行くことが決まったせいだが、マイさんは大泣きで駄々をこね始めてしまった。というのも、僕らと一緒にいた時間があまりにも楽しすぎて、昨日半日会えなかっただけで寂しい思いをしたとのこと。

 それだけ僕のことを思ってくれているのはありがたいが、逆に今までどうやって生きていたのか。謎が深まる。


『うざ……』


 あまりのことに、ミーナットもあきれ返った。いつものことかもしれないが。

 すぐに帰ってくるからとなだめて、ひとまず教会へと行くことにした。それを伝えるとついていくと言ってきたので、必死で止めた。


「マイさんは今日も元気だなあ」

『ああいうのはうざいっていうんだよ』


 出かける前に、必要なものを確認する。杖をもって、ポーチに昨日作った物たちを入れ、フードをしっかりかぶる。午後から出発するらしいので、それまでにやるべきことをしなければならない。

 今日のミーナットは人の姿だ。知らない場所にパッと見人一人で行くのは危険なので、このような形で向かうことになった。さすがに誘拐などは起きないだろうが、変な人に絡まれることがないようにだ。

 支度を終えた僕らは、現在教会へと向かっている。

 教会は、距離的には城の貴族街近く、それでいて平民街からも比較的近く、城壁近くという、なんとも絶妙な場所に建てられている。公平性を保つためだろうか、それにしても行きづらいとこだなと思う。

 しばらく歩いていると、やっとそれらしい建物を見つける。


「あ、あれかな?」


 木に囲われた白く、荘厳な建物の外で、数人の修道士が子供たちと遊んでいる。

 間違いなく、ここが教会だろう。


『ね、早く行こ』

「待って、ミーナット」


 入るのをためらっていると、ミーナットが僕の手を引いて敷地に入っていく。そんな僕らを見かけて、修道士たちが笑顔で近づいてきた。


「あら、初めまして。礼拝ですか?それとも懺悔しに来られた方ですか?」

「えっと、僕たち、パティエンスさんに会いに来て……」

『レアンから紹介されてきたんだよ!いる?』


 そう言うと、少し意外そうな顔をして、呟いた。


「あの人、知り合いいたのね……」

「?」

「なんでもないですわ。こちらにおられます」


 そうして、教会の中に案内され入ると、見かけによらずきれいな内装で、礼拝に来たであろう人々が椅子に座っていた。

 その真ん中に立っている、ひときわ目立った存在感を放つ男性。彼が、パティエンスさんなのだろうと、一目でわかった。

 案の定、案内してくれた修道士は、その男性の前で止まった。


「パティエンス様。客人がおられます」

「―――何ですか?何の用で」


 神父服に身を包み、藍色の長い髪をひとくくりにした男性。彼は不機嫌そうな顔を隠そうともせず、見下ろしてきた。冷たい緑の目に捉えられ、少し怯えていると、ミーナットが僕の前に出て彼をにらむ。

 ただ、それも一瞬のことで、彼は視線を修道士のほうに向ける。


「レアン様からの紹介できたと……」

「……わかった。君、いったんついてきてくれ」

「え、はい!」


 ついていくと、懺悔室についた。

 パティエンスさんは僕に対し、そこに入るように促す。

 僕らが入るのを確認してから自身も入っていく。


「――で、名前は」

「あ、僕はフォゲットです」

『僕はミーナット!』

「はあ……宮廷魔術師の弟子と精霊が何の用だ」

「え!?」


 僕らのことを言い当てられて、驚く。なぜ知っているのかという疑問が湧き上がる。


「あいにく、俺は暇じゃないんだ。要件を早く言え」


 先ほどとは打って変わってガサツな態度になって、戦慄する。豹変の仕方が急すぎる。

 やはりこの街には、少し変わった人が多いのかもしれない。


『やっぱり変な人じゃん……』

「喧嘩ならよそで売ってくれ」


 相変わらずけんか腰のミーナットに、少しだけ心が落ち着く。少なくとも、悪い人ではないはずだ。それに、僕らのことを知っているほど、情報通だということなのかもしれない。師匠が推薦するだけある。

 いったん深呼吸をして、僕は前を見据えた。


「獣人の村で怪しい動きがあると聞いたんですが、知っていることはありますか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ