20 ちょっと休憩のち製作
眠りから目覚めて、ミーナットと一緒に魔道具を作っていったところ、トントンとドアをノックされ作業を中断する。返事をしてドアを開けると、いくらかやつれた顔のマイさんが現れて驚く。
いったいこの時間で何が起きていたのだろうか。考えるだけでもぞっとする。
「……フォゲット君、師匠から伝言……」
「あ、はい!これは?」
「ちょっともう無理ちょっとワカのとこに行ってくる」
「え、行ってらっしゃい?」
一枚の紙を渡されると、そのままふらっと部屋を出て、姿が見えなくなった瞬間バタバタと外に出ていく音がして、静寂が訪れる。取り残された僕らは、ポカンとする。
『……何が書いてあるの?』
「……ちょっと待ってね」
開けっ放しのまま放置されたドアを閉め、手元の紙を見る。
「えっと、教会にいる、パティエンスっていう人を訪ねろって」
『へー』
「師匠の知り合いかあ」
師匠の知り合いならば、立場が高い可能性がある。ついさっき会ったばかりのアークトゥルスさんを思い出し、そのような人と似ていたりするのだろうかと考える。
どんな人なのだろうかと想像してみるが、うまく想像できない挙句、ややテンションの高い人が浮かび上がってくる。
『変な人だったりするのかな?』
「さすがにないよ。多分」
『おかしな人ばっかなんて嫌だ!』
考えても仕方がないので、外を見る。夕暮れの中、人が少なくなった道の中で、マイさんとワカさんが並んで歩いているのを発見する。慰められ、感極まってワカさんに抱きついている。
平常運転に戻ったなとホッとする。普段から人との距離が近いのがわかる一幕だった。
「よし、続きをしようか」
『ねえフォゲット、何を作ってるの?』
「うーん、今後使うかはわからないけど、きっと役に立つものだから。完成するまで秘密」
『えーー気になるーーー』
作業風景を覗き見てくるミーナットをたまに見ながら、魔道具作りに取り掛かる。
魔術式を作り上げ、たまに紙に書いて確認して、正しく作動するかを確かめる。試しに、手ごろな魔石を作り出し、魔術式を付与する。
集中してしずかなへやの中。魔石に魔力を流しながらコンコンと叩いて、魔力を止める。もう一度魔力を通すと、ややこもった音でコンコンと音が帰ってくる。どうやら成功したようだ。
『どーなってるの?すごーい!』
ミーナットは目を輝かせて人の姿を取り、魔石を持ち上げる。
手元でくるくると回してみるが、使い方が分からず、怪訝な顔をしている。頭の上にハテナが見える。
「魔力を流してから使うんだよ。まだ改良する必要があるけど」
『どういうやつなの?』
「うーん、音を記録できる、みたいな感じかな」
『すごーい!』
魔力を流して音を記録し、もう一度流すと音を再生する。今できているのはそこまでなので、繰り返し聞くことができない。そこを改良すればよいのだが、まずは素体づくりだろうか。
今僕が持っている杖も同じような機構で作られており、魔石を核として素体に埋め込み、魔力の流れを作り効果を発揮させる。杖にかかっている効果は単純で、使う魔力の量を最低限に抑えるというもの。効果が増えれば増えるほど、複雑な魔術式が必要になる。
「あれ、今何時?」
『もう夜だけど?』
「え!」
慌てて窓の外を見ると、とっくのとうに闇が町を包んでいる。
「どうしよ……もう、明日にしようかな」
『休憩も大事だし、そうしなよ』
さすがにもうどの店も開いていないだろう。これ以上できることはそうない。
僕は、少しの調整だけを終えて、明日のことを考えながら、眠りについた。
なお、マイさんは夜中に酔っぱらった状態で帰ってきた。




