2 いろいろあった
兵士の言葉に、少し驚く。そして、一拍おいて答える。
「はい。僕は錬金術師です」
息をのむ音が聞こえる。思ったより、周りが静かなためだろうか。
しかし、僕は首をかしげる。
そんなに気にすることだろうかと。
確かに僕は錬金術師だ。そのことに、問題があるのだろうか。例えば、どう見ても少年の子供に、錬金術ができると思わない、とか。
静寂が部屋を支配する。
そろそろ何とかしないとと思い、口を開ける。
「あの...?」
「はっ。し、失礼」
ようやっと動き出したと思ったら、うつむいて、何か考えだした。しかも、何かぶつぶつと呟いている。少し怖い。
『もうほっとこうよ。必要なものはもらったんでしょ?』
「そう、だね?」
なんだか、もう何を言っても動かないような気がしたので、ミーナットの言うように、放置していこうとする。
ここまでの道のりは覚えてるので、問題ないだろう。
踵を返し、元の場所に戻ろうとすると、呼び止められた。
さすがに、一言は言わなければだめだっただろうか。
「鑑定玉が壊れているはずもないし、君は錬金術師なんだね。だったら、そのことを証明してほしいんだ」
すると、兵士はどこからかこぶしほどの大きさの石を取り出し、言った。
「錬金術を使って、これを金に変えてみてほしい。それが、錬金術の基本だと、本に書いてあったからな」
兵士の言葉は、当たり前のようなことだ。けど、僕はその言葉に少し、ためらいを感じた。町に行く前に言われた、師匠の言葉を思い出したからだ。
「あの、僕、師匠に、重要な時以外は、むやみやたらと力を使うなと言われてて......」
「それでもだ。本当のことか、確認しないといけないからな」
その強い語気にあてられ、仕方がないかと、腰のベルトに下げられている短い杖を抜き出し構える。
まさか、こんなに早く力を使うと思わなかった。
『失礼な奴だな。腰を抜かしてやろうよ』
ミーナットの言葉に苦笑しながら、集中する。頭に星空のような景色が浮かぶ。
その状態のまま魔力を流すと、杖が、青白い光を出し、石の姿を見る見るうちに変えていく。
瞬きのうちにそれを金に変える。
「え...は?」
兵士が動きを止める。それに追加して、目と口がこれでもかと開いていて、大丈夫かと心配になる。すると、ミーナットが兵士に向けて飛んでいき、そのまま突進した。もちろん、兵士はそれに反応できず、尻もちをついた。
「み、ミーナット!」
『腰を抜かさなかったから、自分でやっただけだよ』
なんだか、悪いことをした気がする。途端に怖くなる。
「あ、ええと...失礼します!身分証、ありがとうございました!」
いたたまれなくなり、速足でその場から立ち去る。
ひと悶着あったが、これで町に入れるようになった。ただ、不安がいっぱいだけど。




