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第三話 テントサウナの心得

困った時のキャンプ老師。

今回もどうぞお気軽にお楽しみください。

「はぁ……、また来週もボウリングかよ……」


 溜息をつきながら、俺はとぼとぼと歩く。

 友達と行くボウリング。

 それ自体は嫌じゃないけど、毎回だと飽きてもくる。

 でもそういうの、俺言えないんだよなぁ。

 まぁいいや。協調性協調性。


「そこの青年」


 え!? 誰!? 仙人みたいな爺さん!?


「私は人呼んでキャンプ老師」

「キャンプ老師!?」

「ついてきなさい。君の迷いが晴れるやも知れん」

「……?」


 言われるままについていくと、河原に降りていた。


「さて、ここにテントサウナがある」

「テントサウナ!?」

「青年、そこのタープの中でこのフリーサイズの水着に着替えて、中に入りなさい」

「え、何で……?」

「さ、やればわかる」


 よくわからないけど、こういう強引な人に俺弱いんだよなぁ。

 仕方なく渡された新品の水着に着替える。


「うわ、あっつ……」

「ここで身体を温め、川に入る。温度差が心地好いぞ」

「はぁ……」


 真ん中に置かれたストーブでは、ガンガンに薪が炊かれている。

 外でサウナなんて初めてだ……。

 いや、サウナ自体も初めてだけど……。

 うあ……、息が苦しい……。


「……これ、きついですね」

「うむ、だがここで耐えれば耐えただけ、川の水が心地好いのだ」

「そ、そうなんですか……」


 でも、あっつい……。

 苦しい……。

 でも爺さんはまだ座ってるし、合わせた方がいいよな……。


「……ふぅ……、ふぅ……」

「うむ、なかなか良いな青年。その調子だぞ」

「あ、ありがとう、ございます……」


 褒められた、けど、もう、身体は、限、界……!


「……す、すみません!」


 たまらず立ち上がり、入口のジッパーを勢いよく開けると、俺はテントサウナから飛び出した!

 そのまま川に入り、身体を浸すと、あぁ、気持ちいい……!


「ふむ、そこがお主の限界かの」

「え、あ、その、ごめんなさい……」


 川に入ってきた爺さんに、俺は頭を下げた。

 こんな短時間で限界なんて、失望されたかな……。


「何を謝る。己の限界は己にしかわからぬ。無理を続けて倒れては元も子もないのだから、限界を感じたならそこで出るのが正解じゃ」

「え、あ、ありがとうございます……」


 良かった、責められなかった……。


「友人関係でも同じ事よ。嫌な事を『自分が耐えればいい』と隠し続ければ、相手は平気なのだと誤解する。ともすれば好んでいるとさえ思うであろう」

「!」

「もし相手がお主が喜ぶと思って続けている事が、お主にとって苦痛であったら、その者は後悔と自責の念に駆られるであろう」

「そ、そんな……」


 もしかしてあいつら、俺がボウリング好きだと思って誘ってくれていたのか……?


「故に話をすると良い。誘われる事や友人を、本当に嫌いになってしまう前に」

「……はい……!」

「ではもう一度サウナに戻るとしよう。今度は心地好い頃合いを楽しめる事であろう」

「はい!」


 その後俺は、キャンプ老師より短い時間だけど、五セットやってみた。

 後半は自分でも限界がわかってきて、良い感じにギリギリまで耐えてから川に入る気持ちよさを味わえた。

 そしてテントサウナのストーブの上で温めてくれた、野菜たっぷりのチキンスープをいただいた。

 汗をかいた身体に染み渡る優しい味で、すごく美味しかったです。

読了ありがとうございます。


サウナで無理はダメ絶対。

サウナはあくまで健康と快感のためにするもので、我慢大会ではないのです。

長時間耐える事が偉いのではない、と肝に銘じておかないと、「健康のためなら死ねる!」が現実になりかねません。

サウナは楽しく適量を。


またネタに困ったら書きますので、よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「も、もうダメだ! げ、限界!」 「まだよ、まだ頑張れるわ♡」 「ダメだ、で、出るっ!」 「ハァハァ、そんなの許さないわ。ほら、もう少し頑張って♡」 こんなサウナないですか? (セリフだ…
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