第二話 ホットサンドメーカー
困った時のキャンプ老師。
どうぞ深く考えずお楽しみください。
「あー! お金が足りなーい! あれもこれも買いたいのにー!」
私は誰に言っても仕方がない事を叫びながら歩いた。
友達は服とかブランドバッグとか化粧品とかいっぱい持ってる。
私も持ってないわけじゃないけど、もっと持っていないと取り残されそうな気がする。
……いっそ怪しいけど給料のいいバイトっての、やってみようかな……。
「そこな少女」
は!? 誰こいつ!
漫画に出てくる仙人みたいな顔して!
「私は人呼んでキャンプ老師」
「キャンプ老師!?」
「ついてきなさい。君の迷いが晴れるやも知れん」
「は……?」
何だかわからないけど、後について行く。
河原に降りると、おもむろに爺さんはカセットコンロと、
「……何それ?」
二つ折りの鉄板みたいなのを取り出した。
「ホットサンドメーカーじゃ」
「え? あの食パン焼くやつ……?」
「うむ。だがこういうものも焼ける」
爺さんが取り出したのは、餃子だった。
「餃子なんか焼けるの?」
「見ておれ。水を少し多めに入れてな」
爺さんはホットサンドメーカーを、カセットコンロの火にかけた。
しばらくして爺さんは、そのままくるっとひっくり返した。
あ、そうか。そのまんまで両面焼けるんだ。
「できたぞ。食べてみるが良い」
「い、いただきます……」
恐る恐る割り箸を受け取って食べてみると……。
「わ! うまっ! 外はぱりぱりなのに中はふっくら!」
「そうであろう。他にもネギをぶつ切りにして焼いたり、肉を焼いたりもできる」
「すっごい……」
「キャンプにおいて、荷物は少ないに越した事はない。故に一つで様々な事ができるものが重宝されるのだ」
「へぇ……」
「物が多ければ豊かなのではない。ともすれば物に振り回されたり、使いこなせずに無駄にしたりする。その物を生かす工夫を考える事が、本当に豊かになる一つの道であろう」
「!」
言われて私はホットサンドメーカーを見つめる。
私が欲しい服やブランドバッグや化粧品とは全く違う物なのに、何だかキラキラ輝いて見えた。
「次はマグロのテールステーキを焼くぞ」
「美味しそう!」
こうして私は、前より物にこだわらなくなった。
それと、老師が焼いてくれたマグロのテールステーキは、とっても美味しかったです。
読了ありがとうございます。
困った時にさっと書ける連載を持っているっていいですね。
またネタに詰まったら書きますので、よろしくお願いいたします。