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サイコロの『・』はハートのエース

作者: たの・のぶかず

「それが文系の考えなんだよ」

「……ヒロだって文系じゃん」

向き合って座る二人だけの声が教室に響く。


「俺は理系寄りの文系なの」

そう言ったヒロは持っていたサイコロを振った。

『1回目、3』

ノートに書いたヒロがサイコロをユイに渡す。


もしこれで1が出たら――


そう考えながら振ったサイコロがノートの上で弾み6の目で止まる。

「……2回目で1が出なかったから確率は1/2じゃないよね?」

ユイが少しうつむいてから顔を上げ勝ち誇ったように言うと

「だからそれは割合。1が出るか出ないかの確率は1/2なんだよ」

ヒロがユイに言い返した。

『2回目、6』


ヒロの背中越しに落ちる夕日を見つめるユイ。

「ほら、ちゃんと見てろって。いくぞ」

「はいはい……」

面倒そうに返事をしたユイの前で止まるサイコロ。

『3回目、2』


すでに飽きていたユイが夕日色に染まったサイコロを拾い上げる。

「なんでこんなアクリルのサイコロ持ってんのよ?」

「ほら、俺って優柔不断だろ? 色々決めるときサイコロで決めてるんだ」

にこやかに言うヒロを見て少し腹が立ったユイがサイコロを振った。

『4回目、5』


「もういいでしょ? そろそろ帰ろうよ」

イスに掛けていたリュックを手にしたユイに

「10回するって約束だろ?」

ヒロは拾い上げたサイコロをユイの目の前にかざした。

「あぁ、もう! 分かったわよ!」

リュックを置きヒロから取り上げたサイコロを振るユイは

「ちょっ、俺の番……」

――この優柔不断の鈍感!

そう思いながら舌を出した。

『5回目、4』


ノートに書いたヒロが素早く取ったサイコロを振る。

3の目が出ると同時に動き出す二人。

ユイが先にサイコロに触れたが、その上からヒロがユイの手を握った。

お互いの手を見つる二人。

「……6回目、3な」

手を離したヒロが小さく言うと、

うつむいたまま軽く頷いたユイがサイコロを振った。

『7回目、6』


何事もなかったようにサイコロを振るヒロ。

『8回目、2』


ユイがつまんだサイコロを振る。

『9回目、2』


静かにサイコロを拾ったヒロが、

「次、1が出たら……」

手のひらの上で転がしながらユイを見つめた。

「出たら?」

これまでとは違うトーンで話すヒロの声に、

何となく背筋を伸ばし真剣な目をしたユイがヒロを見つめる。


ガラッ、

静まり返った教室の扉が開いた。


「きゃぁ!」

「うわっ!」

派手に驚いたヒロの手から落ちたサイコロが床に転がる。


「……」

「……」

顔を見合わせた二人は何となく微笑んだ。

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