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人見知りでも世界を救える

 ラーザリーという街の中心にある

 由緒正しい冒険者ギルドで

 俺、バハムート・ムンクツェルは魔王討伐隊を作るべく仲間を探していた。

 勇者学校を卒業するまで俺は憎き魔王を倒す意思で燃えていた。実際成績優秀、剣の扱いに長け、魔法も普通に扱える。次期勇者はムンクツェルだろうと噂されていたくらいだ。

 しかし卒業し、いざ仲間を集めるという時、思わぬ壁にぶち当たることになってしまった。

 それは…

 

「おい…な…ね…ンフッwマッ魔王うっ…うおっ…を一緒にに………」


「え…あ、ごめんなさい」ソソクサー


「え…」泣


 …見ての通り俺は人見知り陰キャである。

 学校の皆はちゃんと最後まで話を聞こうとしてくれた。どれだけ影が薄くても、話が詰まっても、言葉が出るまで待ってくれた。…冒険者になるまでは。

 社会は違った。少しでも挙動が怪しかったらすぐに離れていく。話も聞こうともしない。魔王を倒すという目標はみんな同じなのではないのか。一緒に手を取り合って戦おうじゃないか。どうして…みんな…


「…ハァ」


 俺は無意識のうちにため息をついていた。

 もう1人で行くしかないのか…そんな事を考えながらギルドを出ようとしたその時


「ねえ、そこのおっさん?」


 と、見知らぬ白髪の少女から話しかけられた。

 ちょっと待て、俺はまだおっさんと言われるにはまだ早いぞ。初対面になんてこと言うやつだ。

 俺の危険レーダーがピンピンに反応してる。こいつは関わっちゃいけないやつだ。


「ねえ聞いてます?おーい」


 逃げよう。顔を覗き込みながら話しかけてくる少女を無視して、目を閉じ、小声で唱える。


『Step』


 唱えた瞬間、先程まで顔を覗き込んでいたはずの少女が背後に立っていた。少女はいきなり俺が消えた事に困惑しているようだ。


「俺はコミュ障陰キャで、それ以上もそれ以下もない。ただ、陰キャしか持ち合わせない特性もある。それは『隠密』だ。

 隠密は名前の通り、相手に視認されにくくなる。ただ、魔法を使った瞬間しか効果が現れないのが少し使い勝手が悪い。

 そして、駆け出しの冒険者も使える、簡単な魔法の『Step』

 敵の背後を取ることが出来る、一見強そうな魔法だが、目で追える程度の速さでしか動けない。それ故に戦闘では使われることが少ない。

 だが俺が使うと違う。Stepを使った瞬間、特性の隠密が発動する。相手は動いたのにも気づかずに俺は楽々後ろを取れるという寸法だ。


 フ…フフ…我ながら完璧な逃走。どうせ今の一瞬で見失っただろ。諦めろ。俺のレベルにはお前は追いつけない。」

 そう思いながら目を開けると…


「もしも〜し、生きてます〜?」


 目を開けると、そこには先程の少女が立っていた。


「…!?nなっ!バッ馬鹿なっ!オッ俺の魔法はカッ完璧だったハズ!」


 そう言った俺を見ながら、呆れたように話し始める。


「目の前からいきなり消えたのは驚きましたけど、結局真後ろに立たれたら誰だって気づきますよ。それとその…隠密…?ってやつの説明もベラベラと喋り始めましたし…」


 冷静になり周りを見渡すと、俺の周りに人だかりが出来ていた。みんながみんな、俺を物珍しそうに見ている。中には笑っているやつもいた。


 …あぁ、死にたい。陰キャにはつらすぎる空間。


「仲間を必死に探しているのを見て可哀想になってきたので話しかけたんですよ。とりあえず外に出ましょ、ここじゃ落ち着きません。」


 そう言って俺の手を繋ぎ引っ張る少女。女に触られた。ヤバい。テンパるな。俺。ここでちゃんとした受け答えできなくて舐められたらどうする…どう言う…どう…


「あ…はっはイィ…」



 …結構ちゃんと返せた方ではないか?


 〜カフェ 〜


「え!あなたバハムートって言う名前でwww24歳wwwなんですか!?!?www」


 笑われるのも無理はない。バハムートと言ったら、世界最強言っても過言ではないほどの強さを持っているドラゴンである。

 バハムートと名付けられた人間が人見知り陰キャなんて、世の中厳しいなぁ…


 やっと少女の笑いが収まった。何分笑い続けていただろうか

「申し遅れました。私の名前はライザリー・エマと言います。まだまだ冒険者駆け出しで…仲間を探してたところ丁度いいあなたがいたんです。」

「ボッ冒険者…ってコトはァ…あっあの…」

「ちゃんと話してくれません?」


 すんません、俺、これが素なんです。


「冒険者っ……ってことは…トッ友達とかと仲間組めば……ヌカポォ!」

 若干最後のヌカポォ!にビビったようだが、まあ、伝わればいいだろう。


「友達は…もう先にパーティ組んじゃったみたいで!私だけ余っちゃったんです。えへへ…」

 そういって照れながら頭をかくエマ。明るく振舞おうとしている。が、俺には分かる。分かるぞ。


「仲間…か」

「え?」

「俺も友達に捨てられた。昔からの幼なじみで、一緒に冒険する仲間になると信じていた。でも冒険者になると途端に俺に『お前と一緒にいると陰キャが移るわww近づくなよ』だってさ。ハハ、十何年で作りあげた絆はこうもちぎれやすいものなのかよ…wハハ…ハハ…」


 エマが心配したような目でこちらを見つめてくる。

「あなたもそんな過去が…というかどうしてちゃんと話せるようになってるんですか」


「人見知りっていうのはお互い共通点があればすぐに仲良くできる。その共通点を探すのに時間がかかるから友達が作りにくいんだ。」


「でも陰キャじゃないですか。」

 少し睨むような目で見てくる。そんなハッキリ言う?


「陰キャって身内には結構話せるんだよ。身内以外には警戒心が強いがな。」

「ふーん……え、じゃあ私には心開いたってことですか?」


「う、うん、まあな」

 ここで突然エマがテーブルに身を乗り出してきた。

「じゃあ決定!私たち二人で冒険行きましょ!」

「え、いやいやまだお互いの実力とか分かってないし」

「そんなの後でいいじゃないですか!それにバハさんの強力な特性ありますし、何とかなりますって!」

 バハさんってなんだよバハさんって…

 正直ちょっと嬉しい


 口に出る笑みを必死に抑えつつ

「まあ…いいだろう…」

「やったー!やっと冒険に出れる!」


 周りに客や定員がいるにもかかわらず、飛び跳ねながら喜んでいる。おい、めっちゃ見られてるぞ。


 と言っても、頼られるのには悪い気はしない。まともに人と話したのはいつぶりだろうか。しかも女。これは明日は雨が降るぞ



 何がともあれ、今回の冒険は楽しくなりそうだ。





「ちなみに何歳なの?」

「…女の子にそんなこと聞いちゃダメですよ!」

 エマは口の前で人差し指を交差させバツを作った。


 どう見ても18くらいにしか見えんぞ………

あ…あっあっ…

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