第4話
少し話しが動き出します。
「さすがにお腹が空いたなぁ…。」
夜は木の上で眠り、朝から日が暮れるまでは魔術書を読む。
ここに来てから一日目の朝、つまりは昨日、僕は初めての得意属性である毒属性魔術の初歩の一つ、【拘束睡眠】を覚えた。
出来た時は凄く興奮した。まぁすぐ眠っちゃったけど。
…やっぱり僕は魔術が好きだ。きっと、この魔術も、今は僕にだけ効果がある失敗作だけど、練習すれば、きっと狩りにだって使えるかもしれない!
そう思って昨日は寝た訳だけど…ある時気付いた。
具体的には更に次の日。つまりは三日目の昼頃、相変わらず覚えた【拘束睡眠】を失敗し、眠りから覚め、立ち上がった時の事だった。
急に身体がふらつき、僕は地面へ膝をついた。視界もぼやけ、手足が思うように動かない。
ここで僕は気が付いた。僕は餓死に近付いていたんだ。
当たり前だ。
人間が、…それに子供が飲まず食わずで二日以上も過ごしていたら、当たり前のようにお腹が減る。
逆に今まで気付かなかったのは、子供の頃からの経験と、多分、魔術の麻痺が影響していると思う。
「何か食べ物を探さないと…。」
僕は初めて森の探索を始めた。
身体は上手く動かないものだけど、一歩ずつ一歩ずつまるで導かれるように。
動物には何度もあったけど、魔物には何故か会わなかった。
思えば初日から魔物には会っていない。
運が悪かったのだろうか…。
「…?今の音。」
数時間は歩いた時、ふと、ザーッと、水が流れる音が聞こえた。
「…!川だ!」
助かったと思った。その音が聞こえた途端、僕の身体から怠さや重りのようなものが抜け落ち、走って音の方へ向かった。
そこに何が居るか、知らずに。
「…狼………?」
僕の目の前には確かに巨大な見た事も無いような川が、流れていた。そして、その向こうには見間違えそうなほど白く光り輝く毛並みの狼が、佇んでいた。
「だめだ…。」
一気に身体が脱力する。以前に見た狼の比にならない。大きさは僕の背よりも低いはずなのにプレッシャーがやばい。
どんなに鈍感な人でも分かる。死の危険が常に隣り合わせとなった今の僕はもっと。
「逃げないと…ここから逃げないと。」
だけど、足が動かない。
当たり前だ。必死にここまで歩いて来たんだ。初日と違う。自分自身の余裕が無い。それに、あれは本当になんなんだ。
「…?」
「ヒッ!?」
狼が気付いた。もう終わりだ。視線が交差して更に僕は吐き気よりも何よりも意識自体が飛びそうになる。
「あ…あぁ……うっあぁ。」
遂に僕は尻もちをついた。それでも関係ない。僕は振り返って這ってその場を離れようとした。あの存在から。
あの化け物から。
『人間。』
「…………えっ?」
突然、女性のような声が僕の前から聞こえる。何故か後ろからも何処からも、さっきの狼のプレッシャーが嘘のように感じなくなった。
ただ言えることは、僕が地面に顔をつけ、もう動けないこと。身体に限界がきたんだ。
『何故そこまで瀕死なのだ?』
何か女性が質問してる。だけど、満足に口も動かせない。
『お前は少し前から森に来ていたな。何故来た?あの時から思っていたが、一緒にいた男はどうした?聞いているか童。』
僕のことを知っている?それに来た時から?この女性は一体。
『…喋れないか。良いだろう。…なら、今回ばかり護ってやる。どの道私もあと何年かすれば死ぬ運命。お前とこうして出会ったのも何かの縁だったかもしれんからな。』
何だろう。視界がかすんで何も見えない。だけど、光の変化で仰向けにされたことは分かった。
『飲め。』
…冷たい。これは…水?
ーーー助かったーーー
初めて、この森に来て安堵に浸り、僕は眠った。
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