第3話
「父さん、母さんごめんなさい。僕は魔術を使います。」
本に書かれた魔術の呪文。僕はそれを初めて使用しーーー
『いいかルイス。覚えておけ。』
『はい村長!』
「何だろうこれは…。記憶?僕の?」
『全ての魔術は死に通ず。どんな魔術を極めし者であろうとも、己の魔術が己自身に牙を剥くことを常に忘れるな。』
『それは、村長もなっちゃうことなの?』
『それはそうだ。俺だって村では一番と自負しているが、これまで生きてきて、この言葉を痛いほど、何度も痛感した。だから、……お前は魔術を使うなよ?』
「『どうして?』」
以前の僕と声が重なる。今も昔も、産まれた時からでさえも、僕が疑問に思っていることだ。
『………お前にはその才能が無いからだ。悔しいがな。』
「嘘だ。『でも…そうなんだ…。分かった!』」
…分かってない。僕はこの時から既に自分の異常と、僕と関わる全ての人との間の距離感に痛いほど気が付いていた。
だから良い子の振りをした。僕は嘘をついたんだ。
良い子だった僕が、分かったと言えば、恐らく心配はしないと思ったから。
『ふふ。村長は喜ぶかな?僕がここから〜ここまで!全部覚えてきたら!』
記憶の中の僕が楽しそうに本をめくる。
「あぁ。そうだ。この時からだ。」
あの魔術書に比べれば、随分と薄い絵本のような物を必死に覚え、あの人に披露してしまった時から。
「覚えるのが早い。もっと大切に読め。」
あぁ。なんて事だろう。この時、僕はその本当の意味に気付かなかった。
面倒そうな瞳。笑顔の僕を見下すような眼差し。そして、本当に僅かな焦り。
僕はあの男の掌の上で、飼われていたことに気が付かなかったんだ。
ーーーだからーーー
『全部覚えたつもりだけどもう一回読もうかな?
もう、この本に飽きちゃった。
いつになったら新しい本を貰えるんだろ。』
『お前は魔術を使うなよ?』
『分かってるよ!』
「うるさい…」
『ルイス。あなたは呪われてるの。』
『そうなの?』
「黙れ…!ぼくは呪われてない!」
『ルイス』
『『ルイス』』
『そうだね!僕、魔術は勉強しないし使わないよ!』
「!?駄目だ!そっちに行っちゃ駄目だ!!」
けれども幻影の僕は、あいつらの手を取る。
それをただ、見つめることしか出来ない僕はーー僕はーーーー
「はっ!!?…………はぁ、はぁ、はぁ。ここは…そうか、僕はこれを使って…。」
気が付いた時には辺りは日が沈み始め、一気に暗くなっていく。
魔術書への名残惜しさを残し、急いで昨日よりも高い木の上へと登った。
その頃には既に夕陽は沈み、日が通らない木の上は真っ暗で、完全に僕の姿を隠している。
「狼さん。絶対に来ないでね。」
静かにそう願い、僕は眠る前に使用した魔術書の呪文を唱える。
「【拘束睡眠】!」
僕の初めて覚えた魔術。それは僕自身に牙を剥き、強烈な眠気が襲ってきた僕は、為す術もなく、その場で気を失った。
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